OVER-ALL
 
 
 

「お前の仲間はもう行ってしまった」
 呪術師が言った。抑揚のない声だったが、まるで自分を責めているようだとクォーターメインは思った。
 よみがえったばかりの体は、少し動かすだけできしむような音を立てた。服についた土を無言で払う。さっきまでこの土の下で、何かなつかしい夢を見ていたような気がする。
「もう生き返らせなくていいと言ったはずだが」
 クォーターメインはうんざりしたような声を出した。
「何度目だったかな、これで」
「数を数えるのは邪悪な行為だ」
「息子は生き返らせてくれなかったな」
「すべては大地の思し召しのままだ」
「私は覚えている。生き返るのはこれで4度目だ」
 呪術師は聞いているのかいないのか、火のそばで腕を上下させながら頭を振っていた。
「いくらなんでも特別扱いがすぎるんじゃないか?」
「数は何の意味も持たない。真実は決して変わらないものだからだ」
「私が生き返ることに何の真実がある」
「大地がお前を死なせないと言った。それは決して変わることはない」
 炎がしだいに小さくなっていった。呪術師はそれをじっと見つめ、消えたのを確認してうなずいた。
「お前はよみがえった」
「知ってる」
 クォーターメインは息子の墓標を見た。横に並んでいた自分の墓標は、墓から出た時に倒してしまった。
「お前にはいつも仲間がいる」
 呪術師が唐突な調子で言った。
「お前が死ぬと、仲間は必ずお前をこの地に運んでくる。この地がお前にふさわしいと考えるからだ」
 心の中にいくつもの影がよぎった。この地に眠るものと、この地の外で出会ったもの。
「お前にはいつも、お前のことをよく知っている仲間がいる」
 土の下で夢を見ていた。どんな夢だったか思い出せないが、永遠に見ていてもいいような夢だった。けれど、上から言葉が降ってきて、その夢は溶けるように消えていった。
『あばよ、じいさん』
『さよなら、アラン』
『さようなら』
『ありがとう』
 自分をよみがえらせるのはアフリカの大地だけではない。そのことは、多分前から知っていた。
「お前の仲間はもう行ってしまった」
 呪術師がまた言った。抑揚のない声だった。
「かまわん。いずれまた会うだろう」
 仲間だからな、と胸の内でつぶやいた。