17巻 P94
偽造書類のための印を作る担当の金大堅が、特殊な石で造られた印の質感をどう再現するかに苦慮しているところ。
鉄での再現も視野に入れているので湯隆に依頼が行きます。これもよくわからない仕事だと思うけど対応してて流石
色々試した結果、これについては木で作ることにしたらしい。この部署も大変です本当
17巻 P256
鍛冶場に毎日のように来ているという証言があった魏定国
凌振に大砲作りに引きずり込まれてからもうずいぶん経つと思うけどまだ付き合っている……これはもう……(手遅れ)
続編となる「楊令伝」の方で、鮑旭が凌振のことを思い出して「湯隆と魏定国くらいしか親しい人はいなかった」みたいなこと思ってたんですよ おう親しいのかよ まあ親しいよね
あと「いつもぶつぶつつぶやきながら歩いていたという印象」とか回想しててわろた 読者サイドとしては凌振はワーワーうるさい感じなんだけど、大砲と関係ない人から見るとそんな感じになるのね
18巻 P181
攻城兵器部隊を李応から引き継いだ解宝が、李応のことを思い出すところ 李応も自ら打っていたんだなあ
湯隆が鉄を打つ時に夢中なのはきっとデフォルト
18巻 P388
最終巻直前、最後の戦い前の梁山泊のようす
なんかわからないけど「板など」って妙におもしろい
19巻 P161
楊令と史進の会話。楊令は特別な登場人物なので、楊令の口から名前が出てくることはやはり特別な意味がある気がする。
楊令がどう特別かというと、百八星ではない北方水滸伝のオリジナル登場人物であり、続編である「楊令伝」の主人公でもあるのです。
ここまでの来歴:幼い頃に両親を賊徒に殺され、縁あって青面獣楊志の養子となる(シャレではない)。時間はかかったが心を開き、楊志とその妻を父母として慕うようになるが、楊志を狙う敵方の暗殺部隊が親子三人でいるところを襲ってきて、楊志は闘いぬいて暗殺部隊を大半倒したが死亡、その妻も楊令をかばって死亡する。その後梁山泊の寨の一つである二竜山で暮らし、幼いながらも林冲に鍛えられたり、他の好漢とふれあったりふれあった好漢が死んだり色々あったが、やがて秦明の命により魯達に伴われて子午山へ行き、史進の師匠であり林冲のかつての同僚である王進に心も体も鍛えられて色々すごくなりながら成長する。楊令はここまで色々あった経緯により、子供の頃から梁山泊の人々にとって特別な存在となっていたのだが、成長した楊令のところに病に侵された魯達が現れ、数日かけて梁山泊のすべてを伝えた後死亡。楊令はその後ついに山を下りて梁山泊に入り、その凄まじい強さや格や器などで周囲を驚嘆させ続けている……みたいな感じです。あと梁山泊の指令で北の大地に行き、後に金の初代皇帝となる阿骨打とすごく親しくなってたりとかあって、これが「楊令伝」の展開に大きくかかわってくる
そんな感じで本当に色々な意味ですごい楊令ですが、湯隆との直接の絡みはありません。梁山泊入りした時、喜んだ宋江が梁山泊の主だった者たちに会わせる、ということがあったので会ってはいるとは思うけど
楊令は父(楊志)の形見の吹毛剣という伝説みたいな剣を持っていて、これは楊家の祖の楊業が自ら打った剣とかそういうやつなので、他の豪傑たちみたいに鍛冶屋に武器を頼むイベントもないのです(名馬に出会うイベントはある)
ではなぜ史進の棒を湯隆が打ったということを知ってるのかというと、魯達が梁山泊の百八星のことを全員語ったらしいので多分その時に「湯隆という男はこんなものを作った」とか言って、そこに史進の棒も入っていたのではないかと。
ちなみに魯達は百八人全員のあだ名も言ったらしい。でもあだ名の由来は言わなかったらしい。つまり魯達は湯隆の肌がきれいだということは楊令に言っていないという重要かつどうでもいい推測が成り立つ
ついに凌振の大砲が宋の水軍を迎え撃つ時が来た。
この少し前に別の場面で「おまえ、凌振が信用できるか?」「できません」みたいな会話があったんだけど、他に方法がないからみたいな感じでやることになった。
それはそれとして、また容易ならぬこと思い出してくれてますなあ! 凌振が騒いでて湯隆は迷惑そうにしてる、というだけでない鍛冶場の風景がここにある。笑ってるんですよ。しかもいつもときたもんだ。凌振ビジョンではあるけど、湯隆がこういうこと言ってるのはたしかだよ こういうことも言うんだねえ
(アカン)
積み重ねられていく何か
「二発以上撃つな」とあるけど、前の場面では湯隆に「二発しか撃てない」と言われたとあったから、二発はオッケーなんだと思う多分 どっちにしても全く守る気ないわけだけど
なんだかんだいって湯隆はこの大砲と凌振のこと心配してると思うし、撫でればわかるとか言ってる凌振に本気で怒ってたりもしてるような気がする。でもその言葉は凌振の耳には入っても心には届いてないんだよ……
ここ泣いてしまう
発射に成功し、宋水軍の大型船に被害を与える大砲。ここでは十門を1発ずつ撃っただけなので、まだ湯隆の言葉は守られています
19巻 P346〜
宋軍の本格攻撃が始まる前に非戦闘員を脱出させようとする張清。敗戦処理のために奔走する者は梁山泊ではごく少ない。
この出ていくことを拒んだ「工房の者など」に湯隆や李雲が含まれているのです。流れ歩く鍛冶屋だった湯隆が出ていくことを拒んだんだよおー
15巻の李雲のパート、なんとなく湯隆も梁山泊を自分の場所と思っている感ありましたが、なんかもうウワー
あっ……
5発目で砲台が爆発。他の玉も誘爆した大爆発となり、凌振も粉々になったらしい。
きっと湯隆は3発目の砲声が聞こえた時に顔色を変え……いや砲撃開始からすでに絶対あいつ撃ってしまうと思ってたかも。
砲台の場所は工房の脇だから、すぐ近くで爆発してるということについても考えてしまう
19巻 P361〜
ついに上陸してきた宋軍とあちこちで戦闘が始まる。
すでに撤退の合図は出されているが、逃げ出そうとしない安道全。もう仕事はないがそこにとどまる薬師の薛永。
安道全が一心に治療しているのは、重傷を負った湯隆だった。
湯隆はなんていうか……さりげなく、かつ、かっこいい、そういうセリフが多い気がする
15巻では日が傾いてきた時に「冷えてきたな」というセリフもあった(普通)
そして李雲。
「楊令伝」で李雲の弟子の劉策がこのあたりのこと思い出して、李雲が大工なのに撤退しなかったのは、怒ってたからだと言っていた。あと、大工の腕はすごかったけど武器をとって戦うのとかは全然だめだったっぽいことも言っていた……
鍛冶屋の方もまあ武力は低そうです。湯隆にはロン・ベルクみたいな事情はない
ところでこの聚義庁の鐘。
このパートは薛永視点ですが、薛永はかなりの古参、というか晁蓋がこの山寨を乗っ取って梁山泊とした時からのメンバーなので、もう10年くらいは梁山泊にいるはずです。その薛永が一度も聞いたことがなかった聚義庁の鐘とは一体?
聚義庁は晁蓋が乗っ取る前、当時の首領だった王倫の命令で李雲が建てたものです。その頃から鐘は付属していたのか? そのまま10年くらい鳴らす機会がなかったのか? 最初から総員撤退の合図のためにあったのか?
軍師の呉用は負け戦になった時のための準備も色々してるんだけど、「負け戦になった時のことを考える」というのは梁山泊の人たちの中ではわりと異端というか、「あいつそんなことまで考えるのか」みたいに思われたりしていた。続編の「楊令伝」で、こういった準備は宋江の命令でやっていたことが判明するんですが、それはさておき。
全力で戦って滅びたら終わりというが通常の梁山泊人の姿勢っぽいことを思うと、総員撤退の合図のためだけにある鐘が梁山泊の中心の聚義庁に10年くらいの間置いてある、というのがちょっと不思議なんですよね。もしかしたら、この鐘はわりと最近になってから作られたのではないか。というかこれも呉用の「負け戦になった時のための準備」の一環なのではないか。
ここまで考えれば、まあ……あれよ。鐘って鍛冶屋が作るものかと言われると首をかしげるところもあるんだけど、大砲作れるんなら鐘だって作れるんじゃないのかな湯隆。というわけです。
「楊令伝」で、湯隆の弟子だった高平が湯隆のことを思い出すありがたい場面があるんだけど、それによるとどうやら湯隆は部下が帰った後も一人深夜まで鉄を打ったりしてたらしいのね。だから深夜の鍛冶場に公孫勝とかを護衛にした呉用が訪れて、聚義庁の鐘を依頼するエピソードがあったかもしれないという……そういう可能性なんだよ(机叩く) 湖上を含めて梁山泊にいるすべての者に聞こえる音を響かせる鐘が必要だ、もっとも撞く機会はないかもしれんが、とかなんとか呉用殿特有の回りくどい言い方してきたりしてさ。
使われなかったらその鐘はただの聚義庁の飾りになるんだけど、そこで効いてくる初期のエピソードがありますよね。かつて王倫が首領だった頃に湯隆は投獄されていたけど、その理由は「聚義庁の部屋の飾りをいつまでも作らなかった」というものでした。そのあたりを当然把握している呉用殿に、飾りになるかもしれないが引き受けてくれないかとか言ってほしいんですよ(拳握る) 武器や武具ばかり作ってる感じに紹介されたわりに、実際出てきたらわりと実用品なら何でも作る鍛冶屋さんだった湯隆に、飾りのままでいた方が嬉しい何かを作ってもらいたいんですよ
この忙しい時に鐘作りとか不自然だから湯隆はその鐘を秘密裏に作り、完成品は聚義庁の目立たない一角に据えつけられて、隠されてはいないけど使用目的とかは何も言われず、いよいよ官軍上陸が迫ってきたあたりで「聚義庁の鐘が撞かれたら総員撤退の合図」という通告がなされる。
もしそんなことがあったら、湯隆が宋軍上陸前に出ていくこと拒む理由にひとつ追加ができるのでは? 試し撞きもできなかったその鐘が気になるという……そんなこと気にしないだろうか
ついでに聚義庁を建てた李雲がその通告を聞き、聚義庁に鐘なんてつけてないぞと妙な顔をして、呉用殿の依頼で俺が作ったと湯隆が明かしたりするやつもひとつ
19巻 P366
ウワアア安道全 そして湯隆も……
この直後に薛永も死ぬ。ちょうど武松が飛びこんでくるのだけど間に合わなかった。
湯隆の腹を縫い始めてから一言も口をきかなかった安道全。多分治療のことしか考えてないから特別扱いはしていないと思うけど、安道全は湯隆の友だちでもあります。
4巻で湯隆は晁蓋に、白勝と安道全と友だちになったことと、友だちとはいいものだということを話すのだけど、その時にこう言う。
「俺は、鍛冶しかできません。だけど、それでいいのだとも、友だちが教えてくれました。なにかひとつ、できることがあればいいと」
1巻で安道全は、白勝に「医術のことになると何も見えなくなる」と言われて、「実はそうかもしれない、と自分でも思うことはある。しかし、改めても仕方ないという気がするのだ。私は医術しかできないのだから」と答えていた。林冲に「おまえは医師でしかいられない」と言われてたりもしていた。鍛冶しかできなくても、それでいいのだと教えてくれた友だちというのは、安道全のことなのかもしれない。
人と、心まで通い合わせるのはたくさんだ。鉄となら命を通い合わせてもいい。湯隆は4巻時点ではそう考えていた。その後それが変わったかどうかはわからない。梁山泊でひたすら鉄を打ち、おかしな注文に応え、友だちができて、文句言ったりしながらもやっぱり鉄を打って過ごした。流れ歩く鍛冶屋だった湯隆は、梁山泊の鍛冶屋として死んだ。
……正直に言うと、安道全がぎりぎりに手術完了させてたとかでここで湯隆が実は生きてて、宋軍も怪我人病人は殺さなかったりでそのまま生き延びてる可能性もあるんじゃないかみたいなこと、考えなくもなかった(とても考えた)(今も考えてる) もっと死んでそうだった人が楊令伝に生きて出てきたりしたし
結局楊令伝には出てこなかったし、さらに続編の「岳飛伝」(進行中)ではさらにまた年月が経ってるけど、謎のスーパー鍛冶屋老人登場に備える気持ちはまだ残ってます。これはしょうがないと思う。死んだ登場人物限定っぽい「やつら」(公式サイトのあれ)にも出てきてないという立派な根拠もある(注:まだ9人しか出てきてない)(2014年9月現在)
そんなわけで楊令伝ですけど、こちらにも湯隆の名前はたびたび出てきます。
そしてこの章「地孤の光」では、湯隆の弟子の高平のパートがあり、そこで少し湯隆のことが思い出されるのでした。同じ鍛冶場にいた者から見た湯隆がどんなだったか、というたいへんに栄養価のあるパートです ハアうれしや ここ本当に好き……槌からなにか命をもったものが……
兵になりたかったのに鍛冶場に配属されて不満を抱えていた高平が、湯隆と出会って鍛冶の仕事に魅せられるんだよ どうだ!
それにしても湯隆に「教えられる相手を捜していた」と言われたとかすごいや
読者サイド的には湯隆の意志も入っているとしか見えないんだけど、高平はまったくそうは思っていないらしい
(無言)
これ梁山泊が陥ちてからもう何年も経ってる冷静な状態で言ってますからね(言ってはいない)
高平は湯隆と比べると明るくて社交的な感じに見えるんだけど、生き残るべきではなかったとか思ってるのかよ そうかよ
このあれよ、人に教えるの全然向いてなさそう感……尊い……
まあこの「部下」に弟子は含まれてなくて、高平はいつも深夜まで一緒に作業してたのかもしれないけど
未熟者見てイライラしたりとかはなさそうだけど、本当は自分が打ってればそれでいいという……そういう人が、それでも自分の技術を教えられる相手を捜して、基礎から叩きこんだということの意味を考えてしまうよ
そればかりを(復唱)
湯隆には目標とする誰かとかライバル的存在とかはいなかったようでした。父親に鍛冶の仕事を教えられたとあったけど、多分それは基礎のことで、流れ歩く鍛冶屋になってまで鉄とばかりふれあっていた歳月のうちにあの境地に至っていた感じ。
高平は湯隆に比べるとずっとまわりのことが見えてるし、鍛冶しかできない感じでもない。湯隆は字が読めなかったけど、高平は字が読めるから昔の鉄についての書物を読んで研究の一環としたりもしている。こういう資質の違いによる越えられるか越えられないかの話はともかく、こういう高平にここまで思わせる湯隆についてとかそういうことを言いたい。なんとなく、いずれは越えるとも思います。
鍛冶の腕が良くないからと湯隆が認めてなかった職人を、高平は面倒見の良さに着目してまとめ役にしたりとかしています。
湯隆がいる頃から縁の下で色々やってたんだろうな そして湯隆はそれにほとんど気づいてなかったんだろう……弟子というポジション……いいね……