「ふー」
「どうしたの」
「見た? このニュース。8人殺しだって」
「ああ見た見た。ひどいよねー。子供も入ってたんでしょ?」
「動機は連続殺人をしてみたかったからだって。最悪」
「やだねーこういうの。あ、市内じゃん」
「げー。こんなのが近所うろうろしてたんだ。捕まってよかったー」
「ほんとほんと」
「なーんて! エイプリルフールでしたー! ほんとはどうでもいい!」
「えー」
「わたしはかわいいあらいぐーま!」
「具が大きい」
「わたしはかかわいいあらいぐーま!」
「蚊が多い」
「わたしかわいいあらいぐーま!」
「歯が抜けた」
「わたしはかわいいあらいぐ←ま!」
「ぐぶあ!」
「つまり、あんたはお父さんにしつこく文句をつけられ、カッとなって殺した、と」
「はい。でも、でも自分でもよく分からないんです。気がついた時には、もう」
「そうか……魔がさしたんだろうな」
「ううう」
横浜スタジアムに行きました。
野球観戦は夏に限ると改めて思いました。すごい寒い。寒い。
「アイスいかがですかー。アイスー」
「やめろ!」
「は?」
「アイスなんて単語を聞くとよけい寒くなるんだよ!」
「そうだそうだ」
「手に持ったアイスをこっちに見せるのもやめろ!」
「そうだ! そんなものは全部捨ててしまえ!」
「あ、アイスが! やめてー」
暴徒と化した観客、しかしそこに現れる2人の男。
「やめたまえ、諸君!」
「投げ捨てたアイスを買い取るがいい」
「あ、あんたたちは!」
「ベイスターズの新外国人」
「ズーバーとバワーズ!?」
「その通り。試合そっちのけでの乱暴狼藉……」
「すでに諸君を野球ファンとは認められぬ」
「な、何を!」
「やっちまえ!」
「バワーズ! 変身だ!」
「いくぞ、ズーバー」
ピカーッ
「うわあ!」
「こ、これはー!」
「変身合体、スーパーパワーズ!」
とか考えてましたがやはり寒さは紛れなかったので2回が終わったところで帰り、家で見ました。次はビール飲める気温の時に行きたい。
「わあー! きれー!」
「この景色見ると、死体の下には桜の木が埋まってるって話思い出すよ」
「よかったー。ちょっと遅いかと思ってたけど、まだ死体満開だ」
「もう人も少なくなってるし、絶好の死体日和だねえ」
「普段の行いがいいんだよ」
「お前以外のな」
「あはは」
「場所ここでいいんじゃない?」
「ちょっと死体の腕が邪魔だな」
「こうやってずらせば……」
「うん、いいね」
「さて、それでは乾杯を……おいまだ飲むなよ! 早!」
「固いこと言わない。死後硬直気取りですか」
「乾杯までくらい待てないかなあ」
「君も飲みながら言うな。つかなんかもうみんな飲んじゃってるし」
「とか言ってる自分が一番飲んでるじゃん」
「飲んでないよ。たった1人で乾杯の習慣を守ってるよ」
「でも顔がほんのり死体色だよ」
「それは元から! 失敬だな!」
「あはは」
「おっ。酒に遺髪が入った」
「風流だね」
「おーい! この店では遺髪入りの酒を飲ませるのか!」
「大丈夫です、お客さん。もう死んでますから」
「それゃそうだ」
「あはは」
「あー。みんな全然変わってないね」
「ほんとほんと。来年もまたこうやって、みんなで死体見れるといいなあ」
「何をいきなりしみじみと」
「いや、死体見てたらこの世のはかなさが身にしみて」
「ああ分かる分かる。なんか死体ってそういう気持ちにさせるよねえ」
「おっと乾杯を忘れてた」
「では、えーと、今年も死体の元に全員が集まれたことを祝って、乾杯!」
「乾杯!」
「僕らを待っていてくれた死体にも乾杯!」
「乾杯!」
「電気ウナギの鰻丼はいかがでございましたか」
「いやあすばらしい。全身に電流が走ったようだった」
「ありがとうございます」
「シェフ、あんたは天才だ」
「いいんですか、あんな嘘ついて。本当は電気椅子に座らせてるだけなのに」
「いいんだよ。あんなやつに味なんか分かるもんか。珍しければ満足するんだ」
「シェフ……。あなたはそんなことを言う人ではなかったはずです」
「そうだったかな」
「最高の料理でお客様を幸せにしたいと言ってたじゃないですか。こんなの」
「これが最高の料理さ。さっきの客も幸せになったはずだ」
「それは、それは本当にあなたの本心ですか」
「さあ、これで電気鰻丼は評判になる。忙しくなるぞ」
「シェフ! 8番テーブル、電気鰻丼のご注文です!」
「思った通り大評判だな。よし、8番テーブルの電気椅子、スイッチオン!」
ガクン
「あ、停電」
「停電だ」
「シェフ! 作動中の電気椅子が多くなりすぎてブレーカーが!」
ザワザワ
「停電になったら電気鰻丼がしびれなくなった」
「もしかしてインチキ……」
「だまされてたのか」
ザワザワザワ
「ど、どうしましょう、シェフ」
「…………」
「シェフ?」
「無駄だよ。シェフは動かない」
「オーナー」
「なぜならシェフもまたこの店の電力で動いていた電気シェフだったのだ」
「なんですって!」
「彼を作ったのは私だ。店の電力と一体になった彼の料理はすばらしく、すぐに評判になった。だが最近になって彼は変わった。君も気づいていただろう?」
「はい。料理を作るために電気を使うのではなく、電気そのものを料理に無理に取り入れようとしているような」
「自分が電気シェフであり、真の味覚を知らないという引け目が、いつのまにか彼の心をむしばんでいったのかもしれないな。かわいそうなことをしてしまった」
「どうするんですか」
「もう休ませてやろう。店は1から出直しだ。私は客に謝ってくる。君はシェフをかたづけておいてくれ」
「は、はい。じゃあシェフ、こちらに。うわ、重いですね」
「…………」
「ああシェフ。私があなたにしびれていたのは、電気のせいではないでしょう?」
「僕は世界一の金持ちだ。この財力で君の夢を全部叶えてあげたい」
「本当? じゃあ私、自分のドーム球場が欲しいな」
「お安いご用さ」
ガガガガガ
「さあ、君のためのドーム球場が完成したよ」
「わあ、本物の球場! すごーい!」
「好きなように使ってくれ」
「ありがとう! じゃあ屋根の上にのぼらせてくれる?」
「いいとも。でも屋根の上で何をするんだい」
「ドームの屋根でトランポリンをするのがずっと前からの夢だったの」
「え……」
「わーい! ドームの屋根! 屋根ー!」
「あのね君、ドームの屋根は」
「……固い。フカフカしてない。トランポリンできない……」
「彼が財産を全て寄付してしまったのはそれが原因だと言われている」
「悲しい話だね」
掃除をしていたら「混ぜるな危険」を混ぜてしまいました。びっくり。
瞬間立ちのぼる煙、あわてて逃げようとしたものの、すでに神経がやられたのか立ち上がることさえできません。ああこのまま死ぬのかな、と思ったその時。
「ご用ですか、ご主人様」
なんと煙の中から魔人が出てきたではありませんか。
「た、助けて」
驚く余裕もすでになく、それだけ言うのがせいいっぱいです。
「よろしい、助けてさしあげましょう。ヘイル! トゥーユー!」
我に返ると、まだ掃除を始めていない状態に戻っていました。魔人が助けてくれたのです。ありがとう、魔人。そしてさようなら。命あっての掃除なので今日はもう寝ようと思います。
「この部屋にはホルマリン漬けの人体標本がずらりだ。見るかい」
「遠慮しとくよ。そういうのはちょっと苦手だ」
「そうか、残念。すごく有名なものもあるんだけどな」
「有名なもの? 有名人の死体ということかい」
「いや、そうじゃなくて、うーん、何と言ったらいいのかな。まあ見てみないか」
「じゃあ見させてもらうよ。でもあんまりグロいのはいやだぞ」
「大丈夫さ。こっちだ」
「うう、すごいのがいっぱいあるな。やっぱり苦手だ……」
「ほら、これだよ」
「これ? 他のに比べると全然普通じゃないか」
「フフ、本当にそう思うか? よく見てみろ」
「まあ貧弱な体だとは思うけど。うん、実に貧弱だな。病弱な感じはしないから、なんというかこう純粋に貧弱な……あ! もしやこれは」
「そう。これがあの有名な『貧弱な男の見本』だ。すごいだろ」
「すごい、すごいよ。まさに貧弱な男の見本としか言いようがない」
「そうなんだ。誰が見てもそう思う、そこに価値があるわけだよ」
「なるほどね。いやこれは本当にすごいよ。手に入れるの大変だったろ」
「まったくカンタン」
「ヒマだな」
「ヒマだ」
「やっぱり幽霊って夏が旬だもんな」
「春だって出ようと思えば出れるけどね」
「そうかな」
「ほら、桜吹雪とともに現れるとかさ」
「やだよ。俺ら顔とか平凡だし、そんなの似合わないじゃんどうせ」
「さみしいこと言うなよ」
「さみしいよ、実際。あーあーあー」
「はー」
「あー。何やってんだろうな、俺ら」
「ん。なんつーかさ、もっとこう、どんどん活動すべきだと思うんだよね」
「まあな。何もしてないと気が滅入るばかりだし」
「だからさ、今日出てみようと思うんだけど、どうかな」
「今日? 何もそんな急にやんなくたっていいだろ」
「こういうのは思い立ってすぐやった方がうまくいくもんだよ」
「そうかな」
「それにほら、今日は13日の金曜日だし」
「やだよ。俺ら顔とか平凡だし、そんなの似合わないじゃんどうせ」
「さみしいこと言うなよ」
「さみしいよ、実際。あーあーあー」
「おじちゃんおじちゃん。おじちゃんが働いてるのって国際病院?」
「うん、国際病院」
「ええー! おじちゃんウンコくさい病院で働いてんの? きたねえー」
「ん? ああ、そうだな。ウンコくさいところもあるかもね」
「おじちゃんおじちゃん。あそこにあるの、あれ、琥珀?」
「うん、琥珀」
「ええー! おじちゃんウンコはくの? パンツがウンコなの? きたねえー」
「ん? いや、それは違うな。おじちゃんはウンコを吐くんだよゴバボボボボボ」
「あれから20年たちますけど、今でも叔父は僕のヒーローです」