「ヤバイ追いつかれる! 早く、早くどこでもドアを出せ!」
「あせらすなよ、手が震えるだろ」
「それがどうした……おい! 何だその四次元ポケットは」
「ポケットじゃない、四次元茶封筒さ。破れたら終わりだ」
「バカヤロ、なんでそんなもん」
「安かったんだよ。50枚入りでなんと100円」
「どうでもいいから早く出せ、早く」
「だからあせらすなって……あ、あった。どこでもドアー!」
 ビリビリ
「だめだ、大きすぎて破れた」
「どうするんだよ。どうするんだよ」
「大丈夫だ」
「何が」
「あと49枚ある」
 大江戸八百屋町の治安を守る町奉行、北の遠山金四郎と南の大岡忠相。どちらも名奉行のほまれが高いだけに同心たちの競争意識も高く、北と南の仲の悪さはエスカレートするばかりだった。
「どっちが名奉行かな」
「そりゃ大岡様さ、あたぼうよ」
「べらんめえ、遠山様に比べりゃ大岡裁きもかすんじまわあ」
「何言いやがる、べらぼうめ!」
「てやんでい!」
 町人たちももそれをあおり、今や一触即発の北と南。
「フフフ、邪魔者は噛みあわせることで排除できるというわけよ」
 ことのなりゆきを耳にしてほくそえむ、お側用人柳沢吉保。
「さすがは柳沢様、心強い限りでございます……本日はこのような菓子を持参いたしました」
 ふてぶてしい笑顔で箱を差し出す紀伊国屋文左右衛門。
「おお、気が利くのう。うむ、まばゆい菓子じゃ」
「ところで例の件ですが、やはり地図があった方がよいと……」
 なんと彼らは江戸の町を焼き払って材木で大儲けする計画を立てていたのだった。
「地図、のう」
「伊能忠敬と申す者が作った地図がよいと聞きました」
「ああ、奴の地図か。しかしあれはいかん。持ち出すのは不可能じゃ」
「いえいえ、献上されたものをいただこうなどと大それたことは考えておりません。実はその地図がもう一つあるという噂を耳にいたしまして」
「ほう。しかしその地図がどこにあるかは伊能しか知らんじゃろう」
「仰せの通り。そしてその伊能は今北陸に測量に行っているとか」
「分かった。すぐに隠密を差し向け、地図のありかを吐かせよう」
 吉保の命を受け、さっそく隠密・松尾芭蕉が北陸に向かう。忠敬をさらい、拷問にかける芭蕉。
「ぐあー!」
「静けさや岩にしみいる蝉の声」
「話す! ち、地図は……日光東照宮の地下にある!」
 判明した地図のありか、さっそく取りに行く吉保配下の忍たち。しかし。
「うわー床が抜けたあ」
「壁から槍が」
「ココカラ先ヘハ行カセヌ」
「か、からくり人形部隊だ!」
「退けっ退けっ」
 東照宮地下に隠された平賀源内のからくりにしてやられてしまうのだった。
「ぬうう、なんということだ!」
 怒る吉保。そこへ1人の男が現れる。
「それがしにお任せになれば、必ず地図を手に入れてみせましょう」
「何者じゃ、貴様。何が望みじゃ」
「それがしの名は青木昆陽。望みは、焼け野原となった後の江戸に芋畑を作ることでございます」
「芋畑……?」
「は」
「まあよい、まかせよう」
「ありがたき幸せ」
 昆陽は親交のある鼠小僧次郎吉に東照宮地下の地図を盗むよう依頼。
「へええ、面白そうですな。しかしそんなものを手に入れてどうするんで」
「いや芋畑がな……芋畑が」
「……?」
 昆陽の態度に不審なものを感じた次郎吉は独自の調査を開始。ついに江戸放火計画をつきとめ肝をつぶす。
「こんなたくらみに荷担するわけにゃいかねえ。なんとか止めねえと」
 決死の覚悟で江戸城に忍び込み、将軍吉宗の寝所に侵入することに成功。
「! 何者だ」
「お静かに。あやしいもんじゃござんせん」
 大それた企てのことを話す次郎吉、驚く吉宗。
 一方その頃、江戸には前副将軍水戸光圀が訪ねて来ていた。北町奉行と南町奉行の争いを見るに見かねて仲裁する光圀。
「江戸の治安を守ってこその奉行じゃろう。その奉行が自ら江戸の町を混乱させるとはなんたることじゃ」
「まことに……面目次第もござりませぬ」
 恐縮する2人。もともと奉行本人はお互い尊敬しあっており、配下の者たちの争いに頭を痛めていたのが実状。仲裁はまさに渡りに船だった。
「これよりは南北力を合わせまして……」
 ちょうどそんな時にやってくる、将軍吉宗からの秘密指令。
「何、江戸の町を焼く計画だと!」
「決行の日に一網打尽にせよとのお達しでございます」
 一方鼠小僧次郎吉は、青木昆陽にニセの地図を渡していた。
「おお! これが伊能忠敬の地図か!」
「へえ、苦労したのなんの」
「うむ、うむ。これで芋畑が……」
 そしてついに決行の日。決行部隊が江戸のあちこちに散る。しかし。
「な、なんだ!? 聞いておった地形と違うではないか」
「御用だ」
「御用だ」
 混乱する一味の前に同心たちが現れる。江戸のあちこちで大立ち回り。桜吹雪見せたり暴れん坊になったりする。
「お、お側用人様!」
「む。紀伊国屋か」
「一味の者がすべて捕まったそうで……」
「聞いておる。どうやら奉行を甘く見すぎたようじゃ」
 舌打ちする吉保。ため息をつく紀伊国屋。
「どうやらわたくしどもの命運も、これでつきたようですなあ」
「そうでもなかろう」
「はっ?」
「ご老中は賄に弱いお方でな」
 さっそく紀伊国屋から老中田沼意次のもとに大量の賄賂が送り届けられ、事態は丸くおさまるのだった。

 というような大型時代劇スペシャルが見たいなあと思うわけです。
「あ、心霊写真撮れちゃった」
「え、ほんと? 見せて見せて」
「この写真なんだけど」
「なにこれ、私の写真じゃん。この壁のシミのこと?」
「違うよ、ここ」
「だからこれは私だってば」
「…………」
「ちょっと、何泣いてんのよ」
 美容院に行ってきました。

「釈放!? なぜですか! 犯人はあの女に決まってますよ!」
「まあ落ち着け」
「これが落ち着いていられますか、あの女は5時に駅で目撃されている! 駅から現場まで自転車で10分、ガイシャの悲鳴を隣人が聞いたのは5時20分! 十分間に合います!」
「それがな。彼女はその後美容院に寄ったと言っているんだ。実際、駅で目撃された時の彼女の髪は、事件の1時間後に現場に現れた時よりも長かった。アリバイがある」
「そんな……そんなものは……自分で切ったかもしれないでしょう」
「残念ながら、自分で切ったような不自然さはない。第一……」
「じゃあ、駅で目撃された時にはすでに切っていたんだ。そうだ! その時にはカツラをかぶっていたんですよ!」
「あきらめろ。5時すぎに確かに彼女が来店したと、その美容院の人間が証言してるんだ」
「くそっ。何か……何かトリックがあるはずだ」

 カットが5分で終わりました。驚いた。
「それじゃあな。生きてたらまた会おう」
「へえ。お前でも死ぬのか」
「何を言ってる。生きてたらってのはお前のことだよ」
「ちぇっ。ま、いつでも寄ってくれよ」
「おう」

「ねえ。今の誰?」
「ああ、子供の頃の友達だよ」
「あんな人相の悪い友達がいたの? 目つき悪いし顔傷だらけだし」
「うん。昔はそうでもなかったんだけど、今は海賊やってるからなー」
「海賊!?」
「有名なんだぜ。黒ひげっていう海賊、聞いたことあるだろ」
「黒ひげってあの……敵船に捕まってタルの中に押し込められて、そのタルに槍を刺したらなぜか大砲の弾みたいに飛び出して海に逃げた人?」
「そう、そんな話が黒ひげにはいくらでもある。あやうく捕まりそうな時に小部屋に飛びこむ、そこに刃物や銃弾なんかがぶちこまれると、なぜか黒ひげはドカンと天井から飛び出して逃げる。ついたあだ名が『危機一髪の黒ひげ』」
「昔からそうだったの?」
「うん、一度だけ見せてもらったよ。あいつが入った箱を俺がナイフで刺したら、ほんと大砲の弾みたいに飛んでった。今でもあの時のことははっきり覚えてるよ」
「どういう仕組みなの?」
「それは教えてくれなかった。というか、自分でもよく分からないみたいだったな」
「ふうん……あの人が黒ひげ……」

「ねえ! 大変よ!」
「どうしたんだよ」
「あの、あのね。海賊黒ひげが……死んだって」
「……嘘だろ?」
「本当みたい。さっき町で話を聞いたの」
「なんで。どうして死んだんだよ」
「それが、よく分からないの」
「分からないって」
「耳栓をしたら首がふっ飛んだとか聞いたけど、何がなんだか……」
「ねえ、見てこの葉っぱ……文字が書いてある」
「どれ? あ、本当だ」
「『3丁目の田中を殺れ』、だって」
「かわいそうな田中さん。誰だか知らないけど」
「何かの指令だったりしてね。誰だか知らないけど」
「あはは」
「書き直しちゃえ」
「『3丁目の田中を護れ』……おー」
「なんか汚くなったけど、読めるよね」
「うん、読める読める」

 パパパパ
「死ね、田中!」
「危ない、田中」
「伏せろ、田中」
 パンパン
「くそっ。あっちからも田中を狙って」
「田中、俺の後ろに隠れるんだ」
「田中め! これで終わりだ!」
「いかん、自爆する気だ! 田中!」
「田中ー!」
 ドウン
「ああ……田中……ちくしょう」
「大丈夫だ……田中は無事だ……」
「石川!」
「俺が盾になった。気を失っ……てるだけ……だ」
「石川!」
「石川」
「石川ー!」
「あの、先輩。第2ボタン、押させていただけませんか」
「え?」
「あの、第2ボタンを……」
「ああ、第2ボタンね。いいよ。あげるよ」
「いえ、欲しいんじゃなくて、押したいんです……けど。えっと、記念に」
「…………」
「だめですか?」
「いや、いいけどさ」
「ありがとうございます! ああー緊張するー」
「そう?」
「それじゃ、押しますね……えいっ」
 遠くで爆発音。
「ありがとうございました!」
「あ、うん」

「先輩!」
「おう」
「第1ボタン、押させて下さい!」
「だめ」
 こんばんて。

 こんばんはと書こうとした時にこんな間違いをしてしまいました。こんばんて?
 かな入力なのでキーは全く隣り合ってません。こんばんて?

「やった、ついに完成したぞ」
「やりましたね、博士」
「うむ。思えば長い道のりだった。この目で完成を見届けることはできないだろうと思った日もあった」
「博士の努力のたまものですよ」
「何を言う。君の協力があってこそだ」
「博士……うっうっ」
「泣くな。いよいよその効果を目に、いや、耳にする時が来たのだ。食べた者の話す言葉が自動的に翻訳されて聞く者の耳に届く、世紀の大発明……」
「翻訳コンニャク!」
「さあ、マイケルくん! 食べてみてくれたまえ!」
「イエス。モグモグ……」
「ゴクリ」
「みなさん、こんばんて」
「ああ……」
「博士! 博士ー!」

 こんばんて?
「ねえねえ。スイカ買ってきちゃった」
「スイカ? 俺いらねえ」
「ええー! 好きって言ってたじゃん」
「好きだけどこんな季節に食う気しねえよ。夏だからうまいんだろ」
「食べてよー。あたしだって春にスイカなんか食べる気しないよ」
「なら買うなよ」
「だって。尚史が喜ぶと思ったから買ってきたのに……」
「そんなこと言われても食えないもんは食えない」
「もう。捨てちゃうよ。いいの?」
「いいよ」
(おのれ……)
「? 何か言った?」
「いや、何も」
(おのれ……食べずに捨てるというのか……)
「えっ。あ。ス、スイカが」
「有紀!」
 突然スイカが跳ね、有紀の頭をかすめて飛ぶ。
「大丈夫か!」
「う、うん。でも」
(食べずに捨てるなど……許せん)
 テレビの上に着地したスイカ、その模様が怒りの顔を形作ってゆく。
(死ね!)
「キャーッ!」
(そこまでだ!)
(!?)
 驚いて振り返るスイカ、窓際に立っている別の果物。
「桃!?」
「桃があんな所に」
(何だ貴様は)
(見ての通り、桃さ。同じ果物として見ていられなかったんでね)
(消えろ。邪魔をするなら貴様も殺すぞ)
(よせ。お前には無理だ)
(何を言う、落としただけでぐにゃぐにゃになる弱々しい桃が、固い皮を持つこのスイカにかなうと思うか!)
 標的を変え、桃に襲いかかるスイカ。
「ああ!」
「危ない!」
 バキャッ
(何だと!?)
 欠けたスイカに対し、まったく無傷の桃。
(馬鹿な、桃は軽く押されただけでもすぐ変色する果物のはず!)
(その通りだ。かつて私は、店頭で子供に押され、叩かれ、地面に落とされ、真っ茶色に変色して売り物にならなくなった)
(ならば!)
(だが、それをあわれんだ1人の男が、私を生まれ変わらせてくれたのだ! 今の私はあの時の桃ではない。体の90%が鉄で構成された機械の桃だ。白桃戦士、メタルピーチ!)
 ジャーン
(メタルピーチだと……こんなことが……)
(もうやめろ。おとなしくするんだ)
(いやだ……いやだ……せめて……)
 突然向きを変えるスイカ。かたずを飲んでなりゆきを見守っていた尚史と有紀に捨て身の攻撃をしかける。
(死ねえええ)
「うわあああ」
「いやーっ」
 バアアン
(ウオオオッ!?)
 2人に当たる寸前、爆発するスイカ。破片が床に転がる。ぼうぜんとそれを見る、スイカの汁まみれの2人。
(グオ……オ……き、貴様か……メタルピーチ……)
(そうだ。機械の体になった時、私には武器も取り付けられたんだ)
 桃の皮を破って露出した砲身から煙があがっている。
(フ……フハハハ……あ、あわれだな、メタルピーチ)
(何?)
(貴様には何もない……みずみずしい果肉も……甘い汁も……。俺より不幸な者はいないようなつもりでいたが……フハハ……下には下がいるものだ)
(…………)
(桃として生まれ……鉄の体で生きていくのか……なんと……なんと悲惨な……ハハハハ……ガハッ)
 こときれるスイカ。
(……ケガはないか)
「あ、ああ」
「ありがとう……助けてくれて」
(たいしたことじゃない)
 去ってゆこうとするメタルピーチ。
「ま……待ってくれ!」
(……?)
「いや、何て言ったらいいか……うまく言えないけど。でも俺、これからどんなうまい桃食べたって、あんたのこと忘れないぜ」
「あ、あたしも!」
(……フ……ありがとう)
 窓から飛び去るメタルピーチ。
「…………」
「あー……部屋がスイカだらけ……」
「ま、スイカ割りしたと思って」
「家の中で?」
「食べられるとこは食べよう」
「……そだね」

 もぎたてを見つめてる ゆがんだ瞳 
 君の旬 もう過ぎたなんて思ってないか
 終わらない 手を伸ばしていれば
 いつでも君の季節
 メタルピーチ 食べごろを超えて
 明日の荒野に 何も実らなくても
 家の中でよくクモを見かける。
 ゴキブリやアリが増えるのは食べ物のせいだと思われるが、クモが増える原因とは一体。この家はそんなに虫が多いのでしょうか。

 ブーンブーン
「も、もうだめ、虫で前が見えない。動けない」
 ブワーババババ
「息を吸うたびに鼻や口に虫が入ってくる。苦しい。苦しいよう」
 バババババババササササ
「あ……幻が見える。これは……あの時に殺したクモ?」
 バシバシバシバシバシ
「あのクモを殺さなければ、ここまで虫が増えることもなかったんだろうな」
 ブブッブブッギチギチギチ
「ごめんね、クモ」
(いいんだよ。君はこうやってあの時の報いを受けてるじゃないか)
「クモさん……」
 ギビギビギビギビギビギビギビギビギビ

 そしてそのクモが糸をたらしてくれて天国行きというシナリオを予定。
 もっとも本当はクモ殺してないからこんな死に方はしないんですが。