「見て見て。マニキュアの研究してたら風邪薬ができちゃった」
「どんな経緯でそうなったんだ?」
「バイアグラだって心臓病の薬の研究してできたんだよ」
「いや、でもそっちの場合はどっちも薬、ゴホッゴホッ」
「あ、風邪? 風邪ひいてるの?」
「違う。違うから。寄るな」
「そんな顔しなくたっていいでしょ。効くのに。私も自分で試してみたのに」
「へえ……。ちょっと見せて。何だよ、真っ赤じゃん。これを飲むの?」
「違う違う、爪にぬるの。マニキュアの研究したらできたって言ったでしょ」
「爪? 風邪薬なのに?」
「すごい効き目だよ。私の場合はぬって1分で風邪が治ったけどね」
「ほんとかよ。じゃあちょっとためしに」
「ただし!」
「な、なんだよ」
「この薬は特別なの。風邪が治るというより、薬を塗った爪のあたりに風邪が伝染るって感じかな」
「?」
「私の風邪は熱と鼻水が出るというものだったから、指が熱くなって爪から水が出てきた。そしてそれが3日続いた」
「ええっ。なんか怖いなおい」
「あと風邪が治るまでマニキュアの色は取れないから」
「この真っ赤なのが? 他の色ないの?」
「偶然できたものだから、今はこれだけしかないの。試してみる? 別に全部の爪にぬらなくても、1つだけでいいんだけど。包帯でも巻いとけば誰も気づかないよ」
「じゃあやってみるか。左手の小指に……」
「ありがとう! やってくれると思ってた!」
「やっぱり実験台か」
「……本当に治った。全然のどが痛くない」
「でしょ? すごいでしょ」
「でも、なんか指が痛いな」
「ふうん。私はそういうのなかったけど……ま、私はのど痛くなかったから」
「でも大したことないからいいよ。すごいな、これ」
「アハンアハン」
「な、何だよいきなり。変な声出すなよ」
「何も言ってないよ私。自分でしょ?」
「なんで俺がそんな声」
「アハンアハン」
「ちょっと……その爪」
「アハンアハン」
「え。うわ。爪が声出してる。おい、そんなこと言ってなかったじゃないか」
「私の時にはこんなことなかったもの。あ、それもしかしてセキなんじゃないの? 私の風邪はセキは出なかったから……」
「アハンアハン」
「セキ? これが? 俺こんなセキしないぞ」
「アハン」
「でもそのマニキュアには合ってるかも」
「ふざけたこと言ってんなよ! どうすんだよこれ」
「うーん。どこから声が出てるのかなあ。ちょっと見せて」
「アハンアハン」
「……爪と指の間から出てるみたい。そんな大きい声でもないし、包帯巻いとけば聞こえないんじゃない?」
「お前、無責任だぞ」
「あとはまあ、温かくして寝るとか」
「おい!」
「アハンアハン」
「くそっ。まだ治ってないのか」
「アハン」
「アハンじゃねえよ。あー。包帯しててもちょっと聞こえるんだよな。もう少し声小さくならないの、お前?」
「アハン……」
「お、ちょっと小さいじゃん。何だ、できるんならいつももっと……」
「アハンアハン! アハーン!」
「だめか。そういやセキだもんな。無理して小さくしても、次のがでかくなるだけか」
「アハン」
「いや、誠意を見せてくれただけでもありがたいよ。こんなもんぬっといてあやまりもしないやつもいるしな」
「アハンアハン」
「つーかぬったのは俺か。ま、あいつも悪いやつじゃないんだけどさ。なあ?」
「アハン」
「どう、爪の具合は」
「変わらない。一日中アハンアハン言ってるよ」
「なんか疲れた顔してるねー。せっかく風邪治ったのに」
「当たり前だろ……。この声のせいで変な夢見たりしたんだぞ」
「あっはは」
「いや笑い事じゃないから。マジで」
「アハンアハン」
「まあ、たしかにいい声だもんね。どれ見せて。昨日に比べて色の変化などは……」
「さわんな!」
「アハン」
「……え?」
「あ……いや」
「なんでさわっちゃいけないの?」
「アハンアハン」
「いや、別に。ほら、見ろよ。どうだ? 何か変わったところとか」
「いいよ。本当はさわってほしくないんでしょ? さわらないよ」
「だからそんなんじゃないって」
「アハンアハン」
「私、帰るね」
「おい!」
「アハンアハン」
「その包帯」
「あ?」
「もう1週間も経つのに、まだ治らないの?」
「うん。やっぱ夏風邪は長いよ」
「ふうん……」
「なんだよ」
「アハン」
「別に」
「言いたいことあるならはっきり言えよ!」
「なんで怒るの? 何もないよ! 後ろめたいことでもあるの!?」
「ねえよそんなもん!」
「嘘! 分かってるんだからね。あんたは爪のこと好きになったんでしょ」
「何言ってんだよ」
「あたしより、自分の左手の方がいいんでしょ!」
「バカ、変なこと大声で言うな」
「だってそうじゃない。爪なんかに。爪なんかに」
「やめろ、俺はいいけどあいつを悪く言うのはやめろ」
「あいつ? あいつって何よ。やっぱりあんた……」
「アハン」
「そうじゃないけど。でも」
「……さよなら……」
「……誰だ……」
「楽しかったわ……だから、長い間一緒にいてしまった……」
「その声、聞き覚えがあるような……」
「でも、あなたに迷惑をかけてしまったわ……さよなら」
「まさか、お前」
「彼女のこと、大切にしてね……」
「まさか……」
「……アハン……」
「爪! あっ。ゆ、夢か」
「うー。風邪ひいたみたい」
「げ。うつすなよ」
「ひどい」
「風邪かー。あの薬があれば、すぐ治ったのにな」
「……あはは。ほんとだね。あの時つい捨てちゃったんだよね、あんたのせいで」
「俺のせいにすんなよ。勝手にやったくせに」
「でもあんたのせいだもん」
「あれからもう1年か。……いてて、何すんだ」
「また思い出してる」
「思い出すくらいいいだろ」
「だーめ! 人間ならいいけど、爪、は、ケホッケホッ。アハン」
「!」
「あーのどが変。アハン」
(爪……お前はいなくなったんじゃなかったんだな。生まれ変わって、今はこいつの中に……)
「アハンアハン。どうしたの、変な顔して」
「いや、何でもない。大切にしろよ」
「何よ急に。気持ち悪い」
「風邪を」
「風邪を!?」
「スパイ教育! お前はこれからコンタクトレンズをまず右目に入れ、髪をヘアピンでとめてから左目のコンタクトを入れろ」
「そ、そんな! ピンをうっかり左目に刺してしまいます!」
「朝からスリルを楽しむがいい。ハハハ」
「スパイをやめて10年たつけど、今も朝一番に気を引き締めるくせは治らないわ」
「あなたの正体はあせもではなかったのね!」
「な、何を言いだすんだよ」
「とぼけないで! このオロナインH軟膏が全く効かないのがその証拠よ」
「……君は……君は薬を使う際に使用上の注意も読まないのかい」
「なんですって。どういう意味よ」
「自分の目で確かめればいいだろう」
「ええと。にきび・吹き出物・はたけ・やけど(かるいもの)・ひび・しもやけ・あかぎれ・きず・水虫(じゅくじゅくしていないもの)・たむし・いんきん・しらくも……な、ない! 効能の欄にあせもが入っていない」
「それだけじゃない。問題はその右の欄さ」
「右の欄? 使用期限、2000年10月……1年前?」
「こんな薬が効かないからって僕を疑うなんて。もう、お別れだね」
「ま、待って! 私が悪かったわ!」
「さようなら」
消えていくあせも。その喜びと悲しみ。
「そういや今うちに母親が来ててさ」
「ええっ」
「お母さん!?」
「別に驚くことじゃないだろ」
「だ、だって。大学の方には来ないの?」
「見たいとか言ってたから来るかも」
「大変じゃん!」
「なんで。別に案内とかしないよ。勝手に見に来るだけ」
「……お前さあ。俺たちに言いたいことがあるだろ?」
「? どんな」
「とぼけるなよ。協力してやってもいいんだぞ」
「そうだよ。私たち友達じゃない」
「だから何の話よ。マジで読めないんだけど」
「分かってるって。田舎のお母さんにお前あれだろ、大学で成績優秀スポーツ万能、みんなに一目置かれる存在とか手紙で言っちゃったんだろ」
「言ってねえよ」
「よくできた彼女がいますというあたりは私がフォローしてもいいんだよ」
「だから言ってねえ。勝手に話作んな」
「この部室には来るの?」
「来ないよ。教えてない」
「そりゃそうだよな。UFO研究会でだべってますなんて言えねえよ。お母さんの中ではテニスサークルの中心人物なんだから」
「だから作るな。UFO研究会ってことは言ってるよ」
「うわ。それはひどい」
「俺が念じると必ずUFOが来ますとか言っちゃったんだろうな」
「これを現実にするのはいくら俺たちでも困難だぞ……」
「そんなこと言ってないから。何もしなくていいから。ほんとに」
「遠慮するなよ」
「嘘だってことは分かってたけど、いい友達だね、とか後で言われたいじゃん」
「嘘なんかついてないって。少しは話を聞け、お前ら」
「よし、UFO呼ぼう。お母さんのために! いくぞ、みんな!」
「おう!」
「ところでUFOってどうやって呼ぶの?」
「輪になって手をつないで来て下さいとか言えばいいんじゃない」
「よし、それで行こう。じゃあお前はお母さん呼んでこいよ」
「やだよ」
「心配すんな。俺たちにまかせろ」
「まかせるようなことは何もない。何を言っても無駄なのか? おい」
「あら、和明」
「母さ……」
「あ、お母さんですか。はじめまして。いつも息子さんにはお世話になってます」
「ほんと、彼ほど素晴らしい人はいません」
「やめろ」
「まあ、そんな。ありがとうございます」
「今日はちょっと軽く。UFOを呼ぼうかなんて話になりましてね」
「彼がいれば不可能はありませんから」
「まあ、まあ。あの、そういう活動を? 何もしていないと聞いてましたが」
「アハハ。ご謙遜を」
「お前らいいかげんにしろ」
「シーッ。馬鹿、本人が邪魔してどうする」
「大体ご謙遜て何なんだよ」
「お母さんもご一緒にUFOをごらんになりませんか」
「え。ええ」
「なんでわざわざいさせるんだ」
「いいからいいから。これで1時間くらいねばってみろ、そうすれば息子のためにこんなに真剣になってくれるなんて、とかいって丸くおさまるじゃないか」
「最初からおさまってんだよ」
「さあ、呼ぶぞ。みんなで輪になって念じろ」
「おかしいな。来ないぞ」
「もう1時間たってしまった」
「いつもだったらすぐ来るんですよ、お母さん。ほんと、2分くらいで」
「あら、そうなんですか」
「……まずいな。お母さん信じてるよ。退くに退けなくなってきた」
「信じてなくても怖くて何も言えないよ」
「あっ! あれ見て」
フィンフィンフィン
「UFOだ! 来たぞ!」
「やったあああ!」
「おい、騒ぐな。いつもだって来てるじゃないか」
「えっ。あ、そうか。いやあ、今日は遅かったなあ」
「いつもと形が違うよね」
「そう、いつもはもっとこう……ギザギザとかついてて、立派だよね」
「でもお母さん。本当だったでしょう」
「ええ、ええ。すごいですねえ」
「母さん、違うんだよ。これは」
「和明、いいのよ」
「は?」
「お前のためにここまでしてくれるなんて。いいお友達を持ったね」
「ちょっ」
「なんだお母さん、気づいてたんですか」
「かなわないなあ、もう」
夕日に照らされるUFOにみんなの笑い声がかぶさって終わり。
「鏡よ鏡、世界で一番美しいのは誰?」
「それはわたしです」
「ちょっと。何よこの鏡」
「は、申し訳ありません。しかしそれは女王様こそ世界一であるという意味でございまして、すなわちそのお姿を映すその鏡が世界一であると」
「あら、そう……」
「その鏡はそのような言い方しかできない仕様でございまして」
「じゃあ仕方ないわね……。鏡よ鏡、世界で一番美しいのは誰?」
「それはわたしです」
「やっぱりムカつくわ。何とかならないの」
「申し訳ございません」
「別にほめられたくて言ってるんじゃないのよ。この鏡の驕り高ぶった根性が気に入らないの。他人が優れている時には素直に称える精神を持たなければ、将来ろくなことにならないわよ」
「ごもっともでございますが、仕様でございまして」
「絶対教育し直してやるわ」
「そのような。無理でございますよ」
「さあ、いくわよ……。鏡よ鏡、世界で一番美しいのは誰?」
「ここではわたしです。でも、白雪姫の鏡はわたしの千倍もきれい」
「ようし! やればできるじゃないか!」
「……3、だな」
「兄貴……。どういうことだよ。そんなやり方はないだろう」
「やり方? どういう意味だ」
「手ぬるいってことだよ。もっと根こそぎ」
「ばかばかしい。これ以上やる必要がどこにある」
「必要かどうかの問題じゃない。最後までとことんやるのが当然じゃないか」
「ガキだな」
「何だと!」
「ガキだ、お前は。くだらないことに労力を使いたがる。時間の無駄なんだよ」
「兄貴……あんたは変わった。あんただって、昔はおれと同じように」
「くだらねえ。何年前の話をしてるんだ」
「とにかく、おれはそんなやり方を見過ごすわけにはいかない。あんたがやらないならおれがやる。それをよこせよ」
「勝手にしろ。だが忘れるな、それはおれのものだ」
「分かってるさ。兄貴に迷惑はかけないよ」
(ファーストフード店で食事をとる兄弟。数字が見えた時点でスクラッチカードの銀を削るのをやめた兄に腹を立てる、きれいに削らないと気がすまない弟)
「博士、どうも行き止まりみたいですよ。むこうの道だったんじゃないですか」
「いや、こっちで正しい」
「本当にその古文書は信用できるんですか。どうもうさんくさいというか」
「間違いない。今のところこの遺跡についての記述に1つの誤りもない」
「じゃあ埋蔵金はこっちに……でも、もう進めませんよ。細くなって通れない」
「もうだめだと思ってからが本当の勝負だ、と書いてある。無理にでも進もう」
「なんというか僕は、その古文書がどうも信用できないんですよ」
「君も疑り深いな。今までだってこの古文書にすべてを頼ってきたじゃないか」
「確かにそうなんですけど。だめだ、いよいよ道がなくなりました」
「どうにもならなくなった時は、空ばかりじゃなく地上も見てみようよ、と書いてある」
「地面になんて何も、あれっ。この石はなんだろう。妙につやがあって」
「興味を持ったら何にでもチャレンジ、それが人生を豊かにする、と書いてある」
「くそ、動かないな。割ってみましょうか」
「気になるからって意地悪するなんて子供みたいだね、と書いてある」
「どうすればいいんですか」
「一緒にいるだけで幸せ、そんな時間を大切にしようよ、と書いてある」
「もういいです」
「まあ待て。うまくいかない時は、距離をとってみるのもいいかも、と書いてある」
「距離ですか? 後ろに下がるにはまたあの細い道を……」
「流した汗も涙も、心の中で宝石になるから、と書いてある」
「ほら、博士も下がってください。いてて」
「人はみな生まれる時に、苦しい道を通ってきたじゃないか、と書いてある」
「はい。で、その後は……」
ゴ ゴゴゴ ゴゴゴゴゴ
「あ……」
「いつかきっと見つかるはずさ、輝く未来への道、と書いてある」
「扉だ。岩にしか見えなかったのに扉になってたんだ。あの石にふれてから一度離れることで開く仕組みだったのか。きっと石を壊していたら開かなかったんだ」
「うれしい知らせにびっくりするのって、おいしいケーキを食べた時みたいだね、と書いてある」
「博士! すごい埋蔵金です!」
「君の笑顔を見る時が一番うれしいんだよ、と書いてある」
「なんというか僕は、その古文書がどうも信用できないんですよ」
「君も疑り深いな」
「あ、ペコちゃん人形だ」
「うん」
「……あれ? このペコちゃんおかしくない?」
「そう? 普通だと思うけど」
「だってベレー帽がないよ。ペコちゃんてベレー帽かぶってたよね」
「かぶってたかな。ううん、なかったと思うよ」
「あったよ。ここの後頭部のところに確かにかぶってたよ」
「何かの時にだけかぶってたとかじゃない?」
「菓子屋のマスコットがベレー帽かぶる機会なんてあるかなあ。サンタ帽なら分かるけどさ」
「まあね。ううん、ベレー帽か……」
ドゴーン バーン
「しっかりしろ、ジョニー! 傷は浅いぞ」
「フ……グリーンベレーの精鋭である俺がとんだミスをしたものだ……」
「あきらめるな、さあこれを食べるんだ」
「あ、ああ。モグモグ」
いつかきっと ワンダラ〜ン
夢の中 ワンダラン
chuchuchuchulu chuchulu……
ミルキーはママの味
「ジョニー? おい、ジョニー」
「…………」
「ジョニー!」
ドゴーン バーン
「変な想像してない?」
「自分こそ」
こんな夢を見た。
友達の家に行ったらパッケージに女の子がたくさん描いてあるゲームがあり、
「あっ。ギャルゲーだ。やらせて」
「いいよ」
というわけでさっそく開始。
主人公は平凡な少年、しかし家は大金持ちでものすごく広い屋敷に住んでいます。先日母親が亡くなったので、父親は12人の愛人を屋敷に連れてきました。ここでしばらく全員で暮らし、新しい妻を誰にするか決めようというのです。
主人公は12人のお母さん候補と仲良くなり、あちこちでお母さんとか呼びながら暮らします。
「あなたがお母さんになってくれれば、もっと成績が上がりますよ」
「まあ、うれしいわ。今度ごはんでも食べましょう」
そして定期的にお父さんに、誰がいいか誰が悪いかを報告します。
「そうか、お前は八重子を私の妻にふさわしくないと思うのだな」
そんな感じでお父さんの新しい妻選びに陰で奔走するのでした。
「わたし……お父様よりあなたの方が」
「いけませんお母さん、僕たちは親子……」
起きた後ねぼけてやっぱり買おうとか思った自分に目を覚ませと言いたい。
「オフ会殺人事件」
外は吹雪。会場である山荘に閉じこめられる人々。
「ふもとと連絡を……」
「待って! ニュースにでもなったら」
「そうだよ。オフ会で遭難なんて会社に知られたら生きていけない」
ひたすら吹雪がやむのを待っているところに第一の殺人。
「電話線が切れてる! ふもととつながらない!」
大騒ぎになったところで第2の殺人。
「手口が同じだ。同一犯か?」
「両方にリンクを張ってるサイトがあやしい」
疑心暗鬼になったところで第3の殺人。
「ねえ。これまで殺された人たち、共通点があるような気がするの」
「えっ。それは一体」
「サイトのイメージと本人が全然違ってた……」
「……そういえば……」
「ば、馬鹿馬鹿しい。そんなの関係ないよウンコ! チンコ!」
「今さらサイト通りにしようとしても遅いよ」
阿鼻叫喚の中で第4の殺人。
「分かったぞ、被害者の共通点が。犯人はオフ会という特殊環境を利用し、我々の盲点をついたんだ!」
「というと」
「被害者の本名を調べたら全員同じ名字だった。これはオフ会殺人とみせかけた親族同士の争いだったんだ。すべては13年前のあの日から始まった……」
そして探偵が種明かし。更新チェックの自動巡回をセットしておくことでアクセス解析に引っかかり、その時間に家にいたと見せかけるアリバイ工作や、ツにはtuとtsuがあるということから違うURLをそのサイトと見せかけたとかいうトリックを暴いてゆく。