宗教戦争。なんて話を聞くと、初詣には神社、死んだ人にはお経、メリークリスマス、そんな国に生まれてよかったと思ってしまう。戦争の原因になるような宗教でも、この国に入れば骨抜きさ。日本強えー。最高ー。
でも日本だってどこかの国に占領されたりしたら、確固たる信仰が表に出てくるのだろうなとも思うのでした。
ピシー ピシー
「働け! ジャッペ(蔑称)どもが!」
「エコノミックアニマルめ!」
「勤労意欲を満たせ!」
ジリリリリリ
「ようし、終わりだ! 1列に並べ!」
「働きアリのように並べ!」
「出ろ! ウサギ小屋で眠れ!」
リーンリーン(虫の声)
「うっうっ。なんでこんな目に……」
「泣くなよ。ほら、月がきれいだよ」
「明日はきっと富士山も美しいだろうね」
「思えば高度経済成長の頃は、花鳥風月を愛でる心も失っていた」
「誰に占領されていても、この国を愛する心がある限り、日本は僕らのものさ」
「うっうっ。みんな……」
リーンリーン(虫の声)
「大変だ! せ、占領軍が富士山を破壊すると!」
「なんだって!」
「日本人が富士山を信仰の対象にしているというんだ。だから……」
「そんな無茶な!」
「なんとかして止めなければ」
「急いで富士山に行こう。止めるんだ」
「そうだ、富士山だけは」
「富士山だけは!」
ワーワーワー
「司令官。薄汚い日本人どもが徒党を組んでやってきます」
「フフフ、それが狙いだ。もともとこの山を破壊する気などない」
「と言われますと?」
「羊のようにおとなしい日本人どもも、フジヤマのことになると目の色が変わる。これを反乱として狩れば、あの木彫り人形どもの数を減らせるというわけさ」
「なるほど」
「これを何度か繰り返せば従順な者だけが残る。ハッハッハッ、実に愉快だ」
「司令官、あなたは怖ろしい方だ」
ゴゴゴ
「何だ、また地震か? まったくいまいましい国だ」
「いや、これは……まさか」
ゴゴゴゴゴゴ
「おい。この揺れは」
「まずい、逃げろ」
ドドドドー
「噴火だー! 富士山が噴火したぞ!」
「チャンスだ。占領軍の上層部は噴火に巻き込まれたらしい」
「今だ! 日本を日本人の手に取り戻すんだ!」
ワー
「そして、富士山は今の形になったのさ。あの噴火の前は、もっと美しかった」
「そうだったの……」
「その写真は噴火前のものだよ。きれいだろう」
「うん、きれい。……知らなかった。そんなことがあったなんて」
「こんな素晴らしいお山はどこにもないよ。ありがたやありがたや」
「ありがたやありがたや」
都合のいいことばかり考える、日本人の危機意識のなさの一例
「前歯ですけど、どうします? 仮歯作りますか」
「あ、お願いします」
「それじゃもとの歯と同じ大きさにしますから、少し待っててくださいね」
「はい」
ブイ────ン
「…………」
ブイ────ン
「……あのー」
「あ、もう少しですから」
「いえ、そうじゃなくて」
「何か?」
「ええと。さっきから私の歯を全然見ないでそれ削ってますよね」
「ええ」
「見なくてもどれくらいの形とか大きさとか、分かるんですか」
「分かりますよ。今まで治療してきましたから」
「へええ……」
ブイ────ン
「もうすでにこの仮歯のあるべき形が見えているというか……。あとはただクズをはらって取り出すだけでいいんです」
「すごいですね……ちょっとの間しか使わないのがもったいないみたい」
「短い間でも、歯は歯ですから」
「それはそうですけど」
ブイ────ン
「……生き物はみな、限りある命を一心に生きています。生きてゆくだけで増え続ける罪業をその背に負いながら」
「先生?」
「その罪は決して消えることはないけれど、だからこそそれらに恥じないように、一瞬一瞬を精一杯生きていかなければならないと思うんです」
「あの」
ブイ────ン
「ですから、短い間でも大切に使ってくださいね」
「あ、はい」
「もうできますから」
「はい」
ブイ────ン
「よし、できた。入れますね……どうですか、下の歯に当たりませんか」
「あ、ちょうどいいです」
「それじゃ次回に型とりますから」
「はーい。ありがとうございました」
「お大事に」
「ただいま」
「おかえり。今日歯医者だっけ?」
「うん、仮歯入れてもらった。ほら」
「…………」
「何? なんか変? 鏡、鏡……うわー!」
歯ぐきから生えていたのは、それは見事な仏像でした
「ロッチを……ロッチを買ってください……」
「何これ。にせビックリマンシール?」
「4枚セットで本物よりもお安く……」
「いらねえよ」
ヒュウウウ
「ああ。全然売れないわ」
ヒュウウウ
「寒い……。そうだ、シールを体に貼りつけてあたたまりましょう」
翌日の朝、体中にシールを貼りつけた少女の冷たいむくろが発見されました。
けれどもその顔は幸せそうに微笑み、手には火炎魔動のシールが握られていたのです。
いしいひさいちの漫画に、くまのプーさんの兄の「大バカヤローのくまのパーさん」というのが(1コマだけ)出ていたのですが、これがプーさんの笑顔+ほおにうずまきという本当にすばらしい外見だったので忘れられません。
思えばプーさんにも、穴から出られなくなるまでものを食べるなどの大バカヤローな点はあるわけで、それ以上であろうあのパーさんは。パーさんはきっと。
「それでどうなったんだい?」
「それがねえ、あはは」
脇役が談笑しているところにふらふらのパー登場
「おーなかがーすーいーたよおー」
「あっ、パーさんだ。早く食べ物をかくせ」
「いいじゃないか、少しくらいあげようよ」
「えへーへへーたべもーのだー。よこーせー」
ドドド
「わああ。全部食いやがった」
「だからかくせと言ったんだ」
「おごーおごー」
「うわ、白目むいてるぞ」
「のどにつまったんだ」
「パーさん! パーさん!」
パーを逆さづりにしてゆさぶる脇役
「ゲボゲボーゲボゲーボーゲー」
「大丈夫かい、パーさん」
「あんなにいっぺんに口に入れるからだよ」
「わーかったぞー」
「何を?」
「かんでからのみこむことはできるけど、のみこんでからかむことはできないんだー」
「なるほど!」
「よい子のみんなはよくかんで食べようね!」
意外にも教育的キャラクターの予感。
ガシャーン
「あっ」
「と、閉じこめられた!」
「ワッハハハハ。ここは入り込んだネズミどもを始末するための部屋だ」
「な、何!」
「数ある仕掛けを堪能するがいい…」
ゴゴゴゴゴ
「くそっ。天井が降りてくる」
ザクザクザク
「うおお。壁から槍が」
ジャー
「水だ、水責めにする気だ」
パカーン
「わー。床が割れたー」
「落ちるー」
「なんとか部屋から脱出できた」
「別に何もしてないけどな」
「と、いうのがこの銀行強盗計画の全容だ。分かったか?」
「さっぱり分からないよ、兄貴」
「困ったやつだな。ま、俺の言うとおりにしていれば間違いないと分かっていれば別にかまわないんだが」
「それは最初から分かってるよ」
「ならいい。いよいよ今日だぞ」
「兄貴。でもおれ、少し気になることがあるんだよ」
「なんだ?」
「強盗はこのストッキングをかぶってやるんだよね」
「そうだ」
「これ、いつかぶればいいんだい」
「銀行に入る直前だ」
「でも、銀行までは徒歩で行くんだろう? 通行人に顔を見られるじゃないか」
「そうだな。まあ念のためこれでもつけておこう」
「なんだいこりゃ」
「つけぼくろだよ。顔のどこかにつけておけ。すれ違った程度ならこれに目がいって、ほくろがあったことしか覚えてないって寸法さ」
「なるほど! さすがは兄貴!」
「つけっぱなしにしておけよ。逃げる時にも使えるからな」
「うん。あ、だめだよ兄貴」
「何が」
「ストッキングかぶったり脱いだりしたら、ほくろが取れてしまうよ」
「そうだな。なんだお前、珍しくさえてるじゃないか」
「えへへ」
「しかしそうなると困るな。ストッキングがだめとなると代わりには……」
「お面とかはどうだろう」
「おいおい、お前今日はほんとにさえてるじゃないか」
「えへへ」
「しかしこれからそんなもん買うというのもなあ。どこかになかったかな……おっ」
「あったの?」
「おう、ほら見ろ。昔買った忍者ハットリくんの面だ。俺はこれをかぶる」
「お、おれのは? 兄貴、おれのはないの?」
「待ってろ、多分何かあるだろ……おっ」
「あったの?」
「おう、ほら見ろ。昔買ったパーマンのメットだ。お前はこれをかぶれ」
「うん! 口はマスクで隠すよ」
「おお、ますますさえてるな。今日のお前はいつもと別人のようでござる」
「ハットリくんだ! ハットリくんだ!」
「さあそろそろ時間だ、銀行を襲いに行くでござる」
「パワッチ!」
「いらっしゃいませ」
ガターン
「金を出せ!」
「出せ!」
ワーワー キャー
ガシャーン
「……兄貴……。市販されているパーマンのメットって、目まで隠れないやつが一般的だったよね……。兄貴は最初から、おれのこと見捨てるつもりだったのかい? 金、独り占めするつもりだったのかい? ちくしょうちくしょう」
「おお山下! 久しぶり!」
「近藤? うわー変わらないなお前!」
「あ! 倫子ちゃん」
「村井さーん!」
「きゃー! なつかしー」
「おーい幹事あいさつしろよ、誰だ幹事!」
「木下だろ。木下!」
「あいさつ!」
「あ、はい。ええと。それでは一言」
「いよー!」
「ええと、卒業して10年。この同窓会を開いたのには実は理由があります。11年前に教室で起こった殺人事件、あの事件についての僕の推理を、みんなが集まる場所で発表したいと思ったからです」
シーン
「あの事件……」
「結局犯人は見つからなかったんだっけ」
「そう、このクラスの田所君が殺されて」
「あれっ。殺されたの田代じゃなかったっけ?」
「違うよ、田代は退学になったやつ」
「教師殴ったんだっけ」
「自分からやめたんじゃないの? もともとよく休んでたような」
「いつごろやめたんだったかな」
「あの事件が起こる前か後か、似たような時期だったと思うけど」
「後だったような気がする」
「後だよ。死体見つかって大騒ぎしてた時にもいたもの、田代君」
「うん。田代君がよく休むようになったのも、あの事件の後からだと思う」
「……まさか」
「犯人は」
「いや待ってくれ、彼にはアリバイがある。田所の死亡推定時刻、彼は図書室で本を運ぶ作業をしていた。このことは図書室の先生がはっきりと証言している」
「そういえば図書委員だったよね」
「でもそれはアリバイといえるかしら? 図書室と教室は同じ階だった。ベランダを通れば、先生の目をかいくぐって教室まで直接行ける。1分もかからないわ」
「しかし犯行の時間も入れればどうだ? 田所はナイフで殺されていて、現場には大量の血が飛び散っていた。犯人も返り血を浴びたはずだ。その処理の時間が」
「私にも意見を言わせて。私はそもそも、図書室の先生の証言はあてにならないと思う」
「じゃああれは嘘の証言だったと?」
「いいえ。でも別の人間を田代君だと勘違いしたということはあり得る」
「同感だね。本を運ぶ作業、という点が引っかかる。図書委員が大量の本を前に抱えて運んでいるのをよく見たが、本で顔が隠れて誰だか分からなかったものだ」
「じゃあ、図書室にいたのは共犯者……」
「うわああああ」
「近藤君!?」
「お、俺……や、やらなきゃ殺すっておどされて、だから……」
シーン
「……おいみんな。木下の推理も聞こうぜ」
「あ、そうか。忘れてた」
「木下君! どうなの?」
「ふふふ。僕の推理の前にスペシャルゲストの登場です」
「えっ」
「ま、まさか」
「田代君、どうぞ!」
「ええー!」
「あ、ほんとに田代君だ!」
「田代! 久しぶりだな!」
「お前が来るなんて思わなかったぞ!」
「木下が誘ってくれたんだよ。途中で退学したからみんな覚えてないだろうなーとは思ったんだけど、やっぱりなつかしくてさ」
「いや全然覚えてるって」
「うん、さっきまでは忘れてたけど……あっ」
「もしかして木下君、このためにあんなことを……?」
「そうだったのか、この野郎!」
「木下! 名幹事!」
「名幹事木下!」
「よせよ、照れるよ。では全員がそろったところであらためて乾杯を」
ワールドシリーズ見た。むこうでは胴上げしないのですね。胴上げってあれ日本で生まれた風習なのかなあ。いつからあったのだろう。
「殿! 勝ちましてござりまする!」
「うむ、ようやった皆の者」
「殿!」
「殿!」
「それーっみんなで殿を胴上げじゃあ」
「わっしょいわっしょい」
ドズーン
「やはり鎧が重すぎたでござる」
「おみっちゃん! 富くじ当たったんだって?」
「ええ、そうなの。みんなでぱーっとやりましょう」
「おみっちゃん!」
「おみっちゃん!」
「それーっみんなでおみっちゃんを胴上げでい」
「わっしょいわっしょい」
クルクルクル
「あーれー」
わりと最近のような気がする。
みにくいアヒルの子たち
「まさかぼくが白鳥だったなんて」
「まさかぼくが鴨だったなんて」
「まさかぼくがカラスだったなんて」
「まさかぼくがトキだったなんて」
「まさかぼくがインコだったなんて」
バサバサバサ
「今年もまた、子供たちは行ってしまったわ」
「そうだな。さみしくなるよ」
「ああ……どうして私たちの間にはアヒルが生まれないのかしらね……」
「近所に『美容室えれがんす』っていうのがあるの。ひらがなでえれがんす」
「へえー」
「見るたびに思うんだけど、エレガンスってひらがなで書くと印象変わるね」
「ああ、そうかもね。がんすだもんね」
「しかもえれだよ」
「うん」
「えれきてるでがんすって感じだよね」
「いや、それはどうかな」
「パーマの時すごい怖かったよ」
「行ってるんだ」