意味を忘れて言葉の響きだけで考えると、ブラジャーというのは通貨単位っぽい響きだと思う。5万ブラジャー、日本円にして約3万円。

「いくら積まれてもこの土地は売れん。帰れ!」
「困ったじいさんだ、いいかげん折れてくれよ。ほれ、ここに8千万ブラジャーある。これでまだ強情張るってんなら、こっちにも考えがあるぜ」
「何が8千万ブラジャーじゃ。こんなもの!」
 札束の帯封をひきちぎる老人
「こうしてやる!」
 バサバサバサー
「うおっ」
「な、何しやがるくそじじい!」
「よせ、拾うのが先だ」
「金の亡者どもめ! もっとバラまいてやる、そりゃー」
 バサバサバサー
「てめえ!」
「わはははは。わはははは」
 暴行を受けながら笑い続ける老人。乱れ飛ぶ札ビラはこんな形 → ∞

 やっぱり意味を忘れてなかった。
「連続殺人犯、黄金の狩人の正体は……ジェームス! 君だ!」
「ぼ、僕が? ははは、何を言ってるんだ。僕にはアリバイが」
「そのアリバイなら崩れたよ。あの時君はまず……」

(トリック解明)

「……どうだね。僕の推理は間違っているかな」
「フッ。どうやら観念する他はないようだな」
「貴様! 逮捕する!」
「まあそうあわてるなよ。実は見逃してほしいんだがね」
「何をふざけたことを」
「……これでも?」
「あああっ!」
「そ、それはー!」
「し、失礼いたしました!」

 007を見たことない人間の殺人許可証のイメージの一例
「また星が降っただよ」
「今度は吾作に当たったってなあ」
「ナンマンダブナンマンダブ、さあ祭の準備をするべ」

「旅人さん、これから祭があるだ。あんたも来たらええ」
「これから? ずいぶん急な話ですね。昨日までそんな様子なかったのに」
「さっき決まっただよ。あんた、この村に星がよく降るっちゅう話聞いて来たんだべ?」
「ええ。この村には隕石が毎年大量に落ちるって聞いて、もしかしたら落ちるとこ見れないかななんて」
「昨日の晩にまた降っただよ。見れんで残念だったなあ」
「ほう。では、隕石が落ちるたびに祭をするのですか?」
「アハハ、そんなことしてたら1年中祭になっちまうだ。祭をするのはな、降ってきた星に当たって誰かが死んだ時だけだ。それがあるとその年は豊作が約束されるでな」
「な、なるほど……」

 ワアワアワア
「めでたやめでたやな、豊作音頭」
「ちょいなちょいな」
「ささ、旅人さんも一杯いくだ」
「あ、これはどうも。いやあ……すごい盛り上がりですね」
「当たり前だべ。豊作が決まって喜ばないやつなんていねえ」
 ワアワアワア
「さあみんな! ここで昨日降った星に祈りを捧げるだ! まだ吾作の血のあとも生々しいだよ!」
 ワアアアア
「……? ちょっと待つだ! その星をちょっと見せるだ!」
「どうした、留吉」
「盛り上がってるところに水差すでねえ」
「……やっぱりだ! これは星じゃねえ、ただの石だ!」
「な、なんだと」
「何を言い出すだ」
「吾作さんは星に当たったんじゃねえ。この石で殴り殺されただよ!」
「そんなバカな」
「一体誰にだ」
「もうおらには犯人が分かっただ。犯人はこの中にいるだ!」
「なんだって、留吉」
「あの見通しのいい道で後ろから襲いかかるのは無理だ」
 ヒュウウウウウ
「つまり犯人は」
 ドカーン
「うわああああ」
「また星が降っただ!」
「誰か倒れてるだぞ! 当たったんでねえか!」
「しっかりしろ。あ、こりゃいかん。頭に当たってるだ」
「祭に降るなんて初めてのことだべ」
「星のふりして人殺しなんかしたから、星神様の怒りにふれただよ」
「てことは犯人は……」
「そうか! こいつが犯人だっただ」
「星神様が教えてくださっただ」
「そして改めて豊作を約束してくださっただなあ」
「そいじゃ祭を!」
「再開するべ!」
 ワアアアアアア
「めでたやめでたやな、豊作音頭」
「めでたやめでたやな」
「ささ、旅人さんも一杯いくだ」
「あ、これはどうも。いやあ……すごいものを見てしまいました」
「ここは星の村だ。何があっても不思議じゃねえだよ」
「まったく。世の中には理屈では割り切れないことがあるものです」
 ワアワアワア
「星が降ら降ら降らぬ日は」
「いつも降れ降れ待ち申す」
「今年も降る降る星の神」
 ワアアアー ワアワアワアー

「どうだった、隕石がやたら落ちるって村は」
「すごかったよ。あんなものが見れるとは思わなかった」
「え、まさか隕石落ちるとこ生で見れたとか」
「うん、それも見れた」
「ほんとかよ! うわ、行けばよかった」
「でも、もっとすごいものも見た。あんなの小説の中だけかと思ってたのに」
「もっとすごいもの?」
「なんと、探偵が犯人だったんだよ」
「?」
 その日、東京都に住む小林さんはそれを見つけてしまったのでした。
「こ、これは……。こんなところになぜ穴が?」
 それが靴下七不思議の1つ、『土踏まずの穴』だったのです。

 7つの不思議を全て知ってしまった時、その人には不幸が訪れます。長い間靴下七不思議を追っていた杉本さんは、ある日の朝、靴下をいくつか結びつけたものによる絞殺死体となって発見されました。追求してはいけない、それが七不思議と……

「分かった!」
「ん、何が分かったんだいススムくん」
「土踏まずのところになぜ穴があいたのか分かった!」
「ほほう。ぜひ教えてもらいたいな」
「クリスマスだよ! クリスマスプレゼントをその靴下に入れてもらったんだ。プレゼントの箱のはじがとがっていたから、穴があいてしまったんだよ!」
「なるほど」

 ススムくんは次の日の朝、ぬらした靴下を凍らせたものによる撲殺死体となって発見されました。追求してはいけない、それが七不思議と……
 テケテンテンテンテケテンテンテンテン
 落語家登場
 パチパチパチパチ
 座る落語家
「えー……」
 ドヤドヤドヤ
 客席から舞台に土足で上がる男たち
「山脇充! 強盗殺人容疑で逮捕する!」
 テケテンテンテンテケテンテンテンテン
 羽織を頭にかぶった落語家、刑事に両腕をおさえられながら退場

 座布団の前に残る扇子が無人の舞台に花を添える。
 なぜか、その空間を美しいと思った……。
「では、あなたはこのたびの任務で重傷を負い、もはや忍者活動は不可能であるということで」
「はい」
「この契約内容ですと、そのようなケースで下りる保険金は……はーっ!」
 棒手裏剣を投げつける保険会社社員
「くっ」
 とんぼ返りをしてかわす忍者
「な、何をする!」
「それはこちらのセリフです。何です、その身のこなしは。それで忍者活動は不可能などと、よく言えたものだ」
「うぐっ」
「保険金詐欺などをお考えになられると、他のお客様のご迷惑になります」
「ち、ちくしょう……」

「では、あなたはこのたびの任務で重傷を負い、もはや忍者活動は不可能であるということで」
「はい」
「この契約内容ですと、そのようなケースで下りる保険金は……はーっ!」
 棒手裏剣を投げつける保険会社社員
「ぐわー」
 体中に刺さって絶命する忍者

「2件回ってまいりました。片方はどうやら本当に重傷だったようです」
「そうか。ご苦労」
「まったく、因果な商売ですね」
「だが損失はないに等しい。忍者は生命保険には入れないからな」
「あわれなものです」
「同情などするなよ。しょせんやつらは忍者にすぎん。保険会社社員としての誇りを持て。忍者を相手にしても、自ら忍者になりきってはならん」
「分かっております」
「行け」
「はっ」
 天井裏に入っていく保険会社社員
「……もうだめだな、あれは。惜しい男だが」
 つまりこういうことだよ。犬ってのはほんと、いろんなのがいるだろう? ライオン、と聞いて思い浮かぶのはみんな似たようなもんだろうけど、犬だったらバラバラだろう? 大きさも、形も、毛の色も、毛なんてないようなやつもいるな、とにかく多種多様だ。
 だからこっちとしてもね、もうどこまでが犬なのか、分からなくなってると思うんだ。たとえば全身緑色で、歩くと足跡がわりに蛍光色の粘液がつく生き物でもだ、そいつが「わん」とほえたら、ああ犬だな、と思うじゃないか。

 じゃあそれが逆だったら? まっとうな柴犬の姿をしている生き物がいるとする。でもそいつの鳴き声が「ホケキョ」だったら? とても犬とは認められない。そうだろう? 犬の皮をかぶったウグイスか、とまず思われて、どこにもチャックとかなければ、犬でもウグイスでもない生き物ということになる。
 これはそんな孤独な生き物、ウグイヌの物語なんだ。

 ……その鳴き声は春の訪れを告げ、人の心を和ませる。しかしウグイヌ自身は犬ともウグイスとも違う生き物として、たった一匹で世界をさまよい続ける。その声、その愛、その死、そのすべてが乾ききった現代人の心に……

「わん、わん」

 こら、ポチ。お客さんがいらしてるんだ。入ってくるな。
 ああ、悪いね。ちょっと行儀が悪くて……こら、あっち行ってろ。ははは、しかし飼ってみるとなかなかかわいいもんでね。

「わんわんわん!」

 ん? 何だ君たち。その目は何だ。そんな目でポチを見るな。ああ、たしかにポチは全身緑だよ。だが、それがどうしたっていうんだ?

「くーん」

 そうだよ、蛍光色の粘液がたれるよ。だから何だ。犬じゃないか。ほら、こんなにも犬だ。まぎれもなく犬だ。

「きゃいん! きゃいん!」

 あっ何をする! ポチ! ポチ!
 お前らポチをどうする気だ! 金になんかならん、やめろ!

「わんわん! きゃん!」

 やめてくれ、連れていかないでくれ! 犬だよ、犬じゃないか!
 やめろ、この! ああ、ポチ! ポチー!

「きゅーん、きゅーん……」
 ガシャーン ドガガガガ
「キャー」
「ワー」
「全員動くな! この銀行は我々が制圧した」
「手を頭の後ろに組んで床に伏せろ!」
「ナンバー2、早く金庫へ! 10億円があるはずだ」
「よし!」
「それからナンバー4とナンバー5は……」
「うっ」
「どうした、ナンバー5」
「う、生まれる……」
「なんだって!」
「予定日は1ヶ月も先じゃないか」
「刺激が強すぎたんだ」
「う、う……」
「しっかりしろ! 待ってろ、今医者を連れてくる」
「どうするつもりだ、ナンバー3」
「決まってるだろう」
 ドガガガガ
「おいっお前ら! お前らの中に医者はいないか!」
 シーン
「今、妊婦が産気づいている! いるだろう、医者くらい!」
 ザワザワ
「母子ともに健康ならその医者は解放してやる! 早く出てこい! 罪もない赤ん坊がどうなってもいいのか!?」
「……私が診てもいい」
「お、医者か」
「ああ」
「よし、こっちに来い。身分を証明するものはあるか」
「ある。しかしその前に」
「なんだ」
「罪もない赤ん坊と言ったが、生まれれば一緒に連れていくのだろう?」
「ああ」
「ではその赤ん坊も一味だ。罪もないとは言えない」
「む……」
「私は生まれたばかりの赤ん坊を銀行強盗の一味にするようなことはできない」
「……わかった。一味にはしない。早く診てくれ」
「本当か」
「おれたちは約束は守る」
「おいナンバー3。そんな約束をしては」
「背に腹はかえられん」

 シーン
「……生まれたんでしょうか」
「まだじゃないですか?」
「泣き声聞こえませんからね」
「臨月の女性が強盗とは、世も末だ」
「色々事情があるんでしょう……」
「何はともあれ、赤ん坊には無事に生まれてほしいですね」
「そうですね」
「さっきのお医者さん、大丈夫かな」
「…………」
 おぎゃー
「あっ」
「生まれた!」
「やりましたね!」
 パチパチパチパチ
「手は頭の後ろだ!」
 ドガガガガ

「立派な男の子ですよ」
「ありがとう、ありがとう。見ろ、ナンバー5。お前にそっくりだ」
「ふふふ、優しい目元があなたに似てるわ、ナンバー3」
「そ、そうかな……」
「名前は前から決めてあったわね」
「そうだ。男の子だったらタケシ。ぴったりだよ」
「おい、金庫が開いたぞ! これから逃走をはかる」
「よし。ナンバー5、行くぞ」
「え、ええ……」
「タケシはおれが」
「待て! その子は一味に入れない約束だ」
「ああ、一味には入れない。人質として連れていく」
「く……最初からそのつもりだったのか」

 パーン パーン
「撃つな! この赤ん坊に当たるぞ!」
「あ、あなた……いえ、ナンバー3」
「大丈夫だ、撃てやしない」
 パーン パーン
「あぶない、タケシ!」
「きゃあああああ! あなた!」

『10億円強奪 スピード解決』
『人質かばい 犯人重傷』
『「がんばれ」「やった」 銀行が一つになった』
『極限の家族愛』
『問われる医師の倫理観』

「一体何の事件だったんだ?」
「故人とは20年来のつきあいでした……。不躾ですが、顔を見てお別れをしたいと……」
「ありがとうございます。どうぞ」
「ずっと故人を尊敬しておりました。失礼ですが、お顔を……」
「どうぞ」
「本当に素晴らしい方でした。あの」
「どうぞ」
「あんな傑物はもう二度と出ないと」
「どうぞ」
「偉人そのもの」
「どうぞ」
「どうぞ」
「どうぞ」
 ガヤガヤガヤガヤガヤガヤ

「憤死したなんて噂のせいでえらいことになった」
「隊長! あの男はどうでしょうか」
「うん、いいな。健康そうだ。よし、あの十字路だ。1班は右、2班は左、3班は前、残りは後ろから襲う」
「はい!」

「それっ」
 ワアアー
「な、な、な」
「早く服を脱がせろ」
「カッターで切るんだ」
「いや、ハサミの方が」
「な、何を! 何……」
「暴れるな、肉まで切れてしまう」
「脱がせました!」
「よし、心臓マッサージを開始する」
「痛い! 痛い! 生きてるよ!」
「そんなことはわかっている」
「これは動いている心臓をマッサージし、止めることは可能か? という実験だ」
「ふざけ……」
「おい、人工呼吸だ。マウストゥーマウス、息を押し返すようにして」
「隊長! 今回は心臓マッサージのみの効果を調査するはずでは」
「それもそうだ、人工呼吸は中止! 交代でマッサージを続けろ」
「痛い! やめろー! やめろー!」
「止まりそうか?」
「わからん」
「こらあ! 何をしている!」
「しまった人が来た」
「逃げるぞ! 1班は右、2班は左、3班は前、残りは後ろ、ダメだ後ろは人がいるからバラバラに」
 ワアアー

「大丈夫ですか」
「は、はあ。なんとか」
「あいつらは最近ここらへんに出没する組織なんですよ。あなたのような目にあった人が他にも何人もいます」
「なんか……心臓マッサージで心臓を止めるとか言ってましたが」
「それが目的みたいです。死因が分からない殺人法を作り出そうとしているらしいんですよ」
「そんな……」
「ケガはないですか。押さえつけられて体痛いでしょう」
「いえ。大丈夫です」
「ほう。どこも痛くない? あんなにされて? 体がこったりしない方ですか」
「ええ、そういうのはあまりないですね」
「なるほど……1班2班3班、出動!」
「!?」
「それっ」
 ワアアー
「な、な、な」
「肩だ。肩を狙え」
「血流を止めるようにもめ」
「もむことで他の部分に力が入ってしまうもみ方だ」
「痛い! 痛い! 何するんだ!」
「心配するな。これはこってない肩をもむことで肩をこらせることは可能か? という実験だ」
「ふざけ……」
「おい、鍼と灸だ。ツボへの悪い刺激を」
「隊長! 今回は肩もみのみの効果を調査するはずでは」
「それもそうだ、鍼と灸は中止! 交代で肩もみを続けろ」
「痛い! やめろー! やめろー!」