02. ユーイ



「レオナード!」

 扉が開き、小柄な体が元気よく飛び込んできた。
「聞いたぞ。誕生日なんだってな」
「……ああ」
 嫌々ながら今日の分の書類を開いていたレオナードが顔を上げる。
「わざわざそれ言いに来たのか? 他に用はねェのかよ」
「ああ。祝い事なんだから他の用事に紛らわすことはないだろう」
 まっすぐにレオナードの目を見上げ、ユーイは笑った。
「誕生日おめでとう、レオナード。これからまた一つ重なる年が、オマエにとって良いものであることを祈っている」
「…………」
「どうしたんだ?」
「いや……。お前、年寄りくさいの通り越してもうワケわかんねェな。……あ、ちょっと待ってろ」
 レオナードは冷蔵庫から例の箱を取り出し、テーブルに置いた。
「女王補佐官様からだ。今日の客に出せとよ」
「へえ、ケーキだ。食べていいのか?」
「ああ、好きなの選べよ。……何か飲むか」
「え? オマエが入れてくれるのか? オマエの誕生日なのに」
 抹茶ケーキを箱から皿に移しながら、ユーイが首をかしげた。
「ユーイ。お前の真っ当な反応が嬉しいぜ。これからも仲良くやっていこうな」
「……どうかしたのか? オマエにそんなことを言われると、なんだか心配になる」
「お前よりずっと図々しいヤツが世の中には多いってこった。まァ遠慮すんな」
「そうか……? じゃあ、コーヒー」

「レオナード」
「あぁ?」
「オマエの入れたコーヒーはほんとにうまいな! きっと一生飲んでも飽きないだろう」
「……オイ、そんなセリフ男に言ってどうすんだお前」
「どうって何がだ? 女にしか言っちゃいけないのか?」
「何も考えてねェなら女にも言うな」



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ユーイのアレは相手の性別に関わりなく発動するのを希望