09. チャーリー
「レオナードー。誕生日やてー? おめでとー」
執務室の扉が開くのとほぼ同時にチャーリーの声がした。
「おー……ありがとよ」
レオナードは立ち上がり、苦笑してから部屋の奥へと歩き出した。
「なァ、今日ここでおめでとうって言うと、俺のシゴトが増えるって知ってたか?」
「あはは、聞いたで。ケーキと飲みもん出してくれんねやろ」
「知ってんのかよ。ヒドイわ、ケーキ目当てで来るなんて!」
ケーキの箱を運びながら、気味の悪いしなを作る。
「んなわけないやん。当然万難を排して祝いに駆けつけるつもりだったさ……拗ねてる君も可愛いぜ、お嬢ちゃん」
「うおっ、似てるぜ!? お前練習してねェか、そのモノマネ」
「持ちネタは増やせるだけ増やしとくもんや。……あ、知らんかったらもっとはよう来てたんやで。けどさっき廊下でティムカに会うたら、レオナードにケーキをごちそうになりましたとか言うててなあ。そん時昼飯食ったばかりやったから、ほんなら小腹が空いてから行こかっちゅーことで今来たわけや。どれどれ」
目の前に置かれた2つの箱を、チャーリーは妙なアクションつきで2つ同時に開けた。
「お、モンブランや。もーらい。しかしなんや、ずいぶん減っとるみたいやな。これ元はいくつあったん?」
「ああ、ダースで買ったって言ってたな」
「はー、つまり8人が誕生日を祝いに来たと。人気者やなー。ちょっと前までは……まあ正直言うてお前、嫌われてるいうか避けられてるいうか関わり合いになりたくないいうか……そういう感じやったけどなー」
「オイ、言いすぎだろ」
「いやいや、これでも控えめに言ってんねんで。まあ今だから言えるってやつやから許したって。しかし、あの嫌われ者のレオがなぁ……感慨深くて涙出てくるわぁ」
「てめェは俺をケナしに来たのかよ」
「んなわけないやん。拗ねてる君も……」
「もういいっつの」
「あ、飲みもんは紅茶を頼むわ」
「しかし意外な一面ちゅーか……紅茶入れんのうまいなー」
「そうだろうよ。そのせいでこんなことになったんだからな」
「は?」
「レイチェルのヤツが、『アナタの入れるおいしいコーヒーや紅茶でもてなして、ちょっとは親密になったら?』とか言いやがってよォ。ケーキ押しつけていきやがったんだんだ」
「あははは、せやったんか。嫌われ者イメージは未だ健在ってわけやねー。ま、ええことやん。気色悪いほどみんなと仲良しの首座になったらええやん。ジュリアス様を越えるチャンスや」
「冗談じゃねェよ」
「けどな、レオナード」
「あん?」
「さっきのレイチェルのモノマネ、全然似てへんで。もっと練習せんと」
「モノマネじゃねェよ!」
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チャーリーが出るといつも会話文ばかりになってしまう
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