北方水滸伝 湯隆登場箇所一覧及び私感雑感(ページ数は文庫版準拠)
7巻 P129〜
梁山泊から、大工の李雲、鍛冶の湯隆が、それぞれ部下を五名ほど連れてやってきた。

双頭山の山塞強化のための出張です。ここで初めて宋江に会う。

 やはり、湯隆はなにか言いたげだった。
「どうかしたか?」
「いえ、なぜ剣を佩いておられないのかと思いまして」
「そうだな。ここは戦陣と言ってもいい。私のような者がいると、奇異に見えるのかもしれんな。実は、旅の途中で怪我をした。脚の怪我で、歩行が難しかった。それで、剣を佩くのをやめたのだが、梁山泊へ入ったら、また佩こうと思っている」
「安心しました」
「腰抜けだと思われたかな?」
「そんな。ただ、梁山泊では、佩いていただく剣が待っております」

宋江が剣を佩いてないので、6巻で晁蓋が宋江のために打った剣のことを考えてそわそわする湯隆
相変わらずの晁蓋殿好き

湯隆は宋江とはあまり関わっていない感じです。
宋江には心に哀しみを持つ人が惹かれてゆくようなので、湯隆にとってはあまり特別な人ではないのかもしれない


7巻 P247

「湯隆殿、その鉄の塊を、俺にくれぬか。いや、失礼した。今度、少華山より梁山泊に加わった、史進という者だ」

梁山泊入りした史進が湯隆に武器を依頼
引き合わされたのはこれより前らしいがその時湯隆は鉄を打つのに集中してて史進に目もくれなかったらしい

「なににする?」
 湯隆が、額の汗を掌で拭った。
「俺は、棒を遣う。しっかりした棒に、鍛えあげて貰いたいのだ」
「九紋竜の史進か」
 言って、湯隆はただ頷いた。

でも史進のことはちゃんと知っていたらしい


7巻 P363

林冲の軍営に、めずらしく鍛冶場の頭領の湯隆がやってきた。赤い棒を担いでいる。頼んでいたものができあがったのだ、と史進は思った。

約100ページ前の依頼品が完成。
史進が林冲の軍営にいる時のことで、林冲、史進、湯隆という豪華な組み合わせの場面。
湯隆は林冲にも史進にも自然なタメ口です
依頼通りに作ったはいいが、重すぎるのでちゃんと遣えるか心配になって持ってきたらしい。
湯隆の前で見事に遣いこなす史進
そしてこれ

「まったく、この梁山泊というところは、怪物のようなやつばかりがいる。きのうは、李逵が来て、板斧を作ってくれと言うし。李逵は片手で軽々と岩を切る」
「それも技だ。おまえも、どんな鉄よりしっかりした鉄を鍛えあげる、見事な技を持っているではないか、湯隆」
「おまえたちのような怪物と、同じに扱われたくない。俺は、人間だぞ」

李逵が!依頼に!!李逵が!
評判聞いたんでしょうか どんな会話するの……
熱伝導率とかがすごいオーパーツな鍋とかも頼まれそう
忙しいからと断ろうとしても鍋をごちそうになったらおいしくて引き受けてしまいそうなところある
他人のことなんかわりとどうでもよさげだった最初の頃でも食べることには若干のこだわりがありそうだった

このあたりではもうそんなに無口ではなくなってきてるというか、わりと軽口叩いてる感ある


9巻 P254
「梁山泊の中を歩き回ることは許されましたので、それこそいろいろな方と出会い、話をしました。畠や牧で働く方、見張台にいる方、船を作る方、鍛冶の方。私と言葉を交わしてくださる方もいれば、横をむいてしまわれる方もいました」

梁山泊に入ったばかりの扈三娘の言葉
湯隆の名前すら出てないけど、「鍛冶の方」って湯隆でしょう。どんな反応だったかは不明
個人的には「鉄を打ってる時に話しかけたから気づかれてない」を推します


10巻 P36
梁山泊からは、李雲が来ていた。五千人分の兵舎を造りあげてから、梁山泊に引きあげるのだろう。湯隆の弟子は二人来て、すでに鍛冶場は造りあげていた。
流花寨にて。本人来てませんけどまた李雲とセットです。

10巻 P108
「これだ。ほんとうに、これだ。こんな鉄があるのか」
で、出wwwwwwwwwww
湯隆にとっては一番やっかいな男であろう凌振の登場

官軍砲隊の凌振は大砲のことしか頭になく、常に大砲の改良のことを考えている。
鉄、いい鉄があればと懊悩し、鍛冶屋に具体的でないダメ出しをしては嫌がられる日々。
そんなある日現れた謎の男が手渡した鉄の棒に、凌振は強く心惹かれる……。

名前は出てませんが、ここで凌振を梁山泊に引き入れる布石として使われた鉄の棒は明らかに湯隆製
どういう注文を受けて湯隆がこれを作ったのかは不明だけど、こういう鉄を求めている男を梁山泊に引き入れるために必要なのだと言われて打った棒であの男が来た時の湯隆の心境よ


10巻 P133
「これは、私の思いにすぎないのだが」
 李応が、呉用の目を見つめて言った。
「攻城兵器、たとえば衝車や雲梯、それに投石器や大砲。そういうものを遣う部隊を育てたい。梁山泊軍には、必要ないものだろうか?」
「いや、必要になる。必要になった時に、急に育てるなどということはできん。水軍が整いつつあることだし、次は重装備の部隊だと私も考えていた」

攻城兵器の部隊。担当の李応。
鍛冶場に無茶振りと大量注文する人がまた増えた

「そのためには、林冲の牧や九竜寨のようなものを、築かなければならん」
「それも、考えてはいる。湯隆や李雲と、よく話し合っておいてくれ」

また李雲とセット


10巻 P165

 やはり、鍛冶場はあるのだ。そして、この鉄を作っている。凌振は、腰の鉄の棒にちょっと手をやった。敵とか味方とか、そんなことはどうでもいい。ただこの鉄を作っている男に会いたい、と思った。

官軍の梁山泊攻めの一員である凌振だが、例の鉄の棒をくれた謎の男が、棒が梁山泊で作られたことを匂わせていたため、なんとかならないかと色々考えるのだった。

別に官軍を裏切ったりはしません。梁山泊を攻め落としたらその鍛冶場の男を捕えれば、とか考えている。


10巻 P251

 呉用が眼を配らなければならないことは、梁山泊で行われている、ほぼすべてにわたっていた。銭のこと、二竜山や双頭山のこと、流花寨のこと、文治省のこと、水軍のこと。任せているのは、李雲がやっている建設や、湯隆がやっている鍛冶などで、それも木材や鉄がどれほど蓄えられているかについては、眼を通しているようだ。
任せられているらしい
またセットですね

10巻 P326
 砲隊は、動きが悪い。すぐそばを動き回る小舟には、砲身の向きはついていけない。
 思った通りで、張順と童猛の率いる小舟の船隊は、岸のすぐそばまで寄り、矢を浴びせ、混乱したところで、凌振を捕えた。その凌振のそばに、いま燕青がいる。鉄にこだわる凌振に、燕青は湯隆が打った鉄を見せていた。凌振という男の、一番弱いところを衝いた、と言っていいだろう。
官軍対梁山泊の戦いの中で、官軍砲隊長の凌振は捕えられる。
どうも事前にあの鉄の棒を見せたのは、捕えた時にすんなり梁山泊に引きいれる目的だったようです。
11巻P315で、この作戦は魯達と呉用が考えたらしきことが語られている。
魯達は梁山泊の好漢のことはみんな知ってるけど、湯隆への注目度は中でもわりと高い感じする

10巻 P376
 槌の音が熄み、話し声が聞こえた。しばらくして、二人が鍛冶場から出てくる。
 呼延灼を見た燕青が、白い歯を見せて笑った。汗にまみれた肌が、陽の光を浴びた。凌振は、ちょっと頭を下げた。
「大砲のための鉄を打っているのだが、なかなか気に入って貰えない」
「気に入る、気に入らないの問題ではない。こうあらねばならぬというものが、頭の中にある。それに近い鉄を作ろうとしているだけではないか」
「確かにな。われわれが打つものは、湯隆が打ったものとは、確かに違う」
「なら、湯隆に打って貰えばよさそうなものだが」
「待てないのですよ。湯隆は山ほど仕事を抱えていて、大砲の鉄にかかれるのは、来年になってしまうらしい」
 陽を仰ぎ、燕青が額の汗を拭った。
梁山泊入りした呼延灼視点のパートです
先に梁山泊入りしていた凌振、さっそく湯隆に会いに行ったが先約がびっしりだったので自分で鉄を打っているらしい
燕青がそれを手伝ってるのは何なんだろう。大砲の鉄を優先しろとか騒ぐ凌振をなだめて、誘ったという立場上手伝っている……?

この巻、湯隆の名前はよく出るんだけど本人出てこないまま終わります
あの鉄の人みたいなポジション

11巻 P115
 杜興は、李応の副官たることを望んだ。しかしそれを、李応以外の者には言わなかった。李応は何人かの下級将校を部下にし、工房で大工や鍛冶の職人たちと仕事をはじめた。副官どころではなく、上級将校すら付いていない状態だった。

梁山泊に入る前に李応の執事だった杜興視点のパート。
李応の攻城兵器部隊は着々とできあがってきてるらしい

梁山泊入りして以来、かつての主人であり弟のようでもあった李応と離され、李応は新しい環境で元気にやっていて、子離れできない感じの杜興が寂しいこのあたりの杜興パート大好きだけど、杜興と湯隆はそんなにかかわりないですね


11巻 P148

 李応は、一千の部隊を編成していた。
 これは、梁山泊にはいられない。重装備の部隊になるからだ。まだ、衝車も雲梯も投石機も出来てはいなかった。
 ただ、工房で図面を描き、必要なものは鍛冶場で作って貰った。鉄製のものは、多分間に合うはずである。あとは、伐採して干してある木を、図面に合わせて切り揃えればいい。はじめのところは、大工の李雲が、兵に教えに来てくれることになっている。

李応のパート
鍛冶場にちゃんと依頼して、ちゃんと作って貰ってる
納期も無理させてない感じ……クライアントとサプライヤーの理想的関係……


11巻 P241
 顔に笑みを浮かべた李応が、親指ほどの太さの、短い鉄の棒を持って現れた。
「見てくださいよ、これを」
「鉄の棒だな」
「湯隆が、凌振の大砲のために打っていた鉄です。これを、衝車の留金にしたのですよ。曲がってさえいない。硬い鉄だと折れるし、軟らかな鉄だと曲がる。三度遣っても、これはまったく変っていないのです」
「鉄にも、硬いものと軟らかなものがあるのは知っているが」
 以前、湯隆と二人で、二振りの剣を打った。宋江のものと、自分が佩くためのものだ。その時、剣は硬いばかりでは駄目なのだと、湯隆に教えられた。

李応の依頼品に使われていた凌振の大砲のための鉄
いや別に横取りしたわけではないはず 留金だから量も少ないだろうし
凌振のための鉄もちゃんと湯隆が打ってることを凌振のために喜びたい

この巻では扈三娘が戦場でピンチになって二刀流の剣の片方をなくすという出来事があります
湯隆に打ってもらったりしてないかな……してる気もするんだよ